黒凪のダンジョンマスター   迷井豆腐(MF文庫J)



筏から始まる、世界一場違いなダンジョンマスターの新感覚ダンジョン運営ストーリー。
大枠としてはダンジョン運営ものですね。特徴は設定と噛み合っていない大海原が舞台ということ。
普通、ダンジョンは地面の上に作るものですし、そもそも海上だとロクに人が来ないわけで…
と一見すると「一体どうするんだ?」という不安と疑問を覚えてしまいますが、船をダンジョンに見立てて
生活空間として、そして戦闘陣地として発展させていく展開は意外性があって面白いです。
ダンジョンマスターのスキルそのものはゲームっぽさ満載なので見ていて楽しいですしね。
ラブコメ面は今のところ進展なし。記憶を失う前の主人公には大事な幼馴染がいたようですが…?

主人公は異世界の大海原のイカダの上に記憶喪失で目覚めた少年。
持っているのはダンジョンマスターのスキルだけという状況から海上サバイバルを強いられることに。
現代日本人と思われる素性に加え、記憶喪失であることも相まってか、環境適応力が高い上
基本的に前向きな性質で割り切りが早く、味方には甘いが敵対者には比較的容赦がない。
その一方で、世界から敵対視される魔王という役職を強制的に押し付けられ、大部分の他者との交流が
絶望的になってしまったがゆえに、自分を慕う存在には感激屋になったりと感情豊かな面も。

ヒロインは忠誠心厚き悪魔メイド、健気な獣人娘、脳筋な元剣闘士、人見知りな幽霊令嬢。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
どう考えても無理ゲーなスタート環境から徐々に快適な生活空間を整え、海賊として船同士の海戦が
行えるようにまでなっていくという一風変わった成り上がり物語にはワクワク感が詰まっていますね。
スキルがかなり便利であるとはいえ、思考と閃きを頼りに頑張る主人公の姿は応援したくなりますし
そんな彼を支える健気なヒロインたちや仲間たちとのアットホームなやり取りにもほっこりします。
何よりも、大海原を舞台にした冒険とバトルという絵面には少年心をくすぐる問答無用の浪漫があるかと。
本筋は神々の代理戦争である秘宝略奪戦を勝ち抜くべく、他の参加者(残り六人)と戦いを繰り広げる
というのが大まかな流れになるようですが、主人公の失われた記憶の謎も気になるところ。