嫁々いみぐれーしょん   榊一郎(講談社ラノベ文庫)



異世界種族の存続を掛けた「愛の戦い」が描かれる、ごった煮学園ラブコメストーリー。
異世界と繋がっている日本が舞台ということで、エルフやドワーフといった異種族が普通に存在しています。
大枠としては突然嫁が押しかけてきました系のラブコメですね。主人公は教師ですが教師もの要素は薄め。
というか、異世界人を取り巻く問題、各勢力の思惑、政治的な意向といった外側からの干渉が強いため
話の展開としては陰謀やバトルばかりが目立って、肝心のドタバタ嫁争いの印象が薄れてしまっている感も。
ちなみに、スターシステムで作者の前作「アウトブレイク・カンパニー」のキャラが複数登場しています。
ラブコメ面は主人公がどの異種族も欲しがる体質持ちということで、どんどん嫁候補が増えそうですが
一夫多妻制もほのめかされているのでハーレムエンドも期待できそう。

主人公は異世界人から見て優良体質ゆえに異世界種族の嫁候補たちに殺到されることになった新任教師。
真面目一筋で倫理観が強く朴念仁な性格をしており、エンタメ関連に疎い。
強いとか弱いとか関係なく、男なら女子供を躊躇いなく守れる人間でありたいという信念の持ち主で
その人の善さと面倒見の良さゆえに、揉め事に巻き込まれることが多いという難儀な特性持ち。

ヒロインは猪突猛進なエルフ、猫っぽいドワーフ、淑やかなヴァンパイア従妹。
一番のお気に入りはヴァンパイアの母と人間の父を持つ中学三年生の従妹、錫木奈々海。
透けるように艶やかな黒髪、宝石にも似た夜色の瞳、そしてそれらと鮮烈なほどの対比を成す白い肌。
と、水墨画から抜け出てきたような上品な雰囲気を持つ、綺麗という表現が相応しい美少女。
中学デビューと同時に、いかにも吸血鬼っぽいふるまいを装うようになり、しばしば周囲の者たちからは
「とても中学生とは思えないくらいに大人びている」と評されているが、実際は本性を隠しているだけで
主人公と二人だけの時には妙に子供っぽいところを曝け出すことも珍しくはない。
普段は主人公のことを「御兄様」と呼ぶが、酷く慌てている時は「兄ちゃん」と昔の呼び方に戻る。
吸血鬼しぐさの一環として、外出用の服は九割型ゴスロリ。

現時点(一巻)においての評価はC。
主人公を中心に色々な思惑が絡み合っており、単純なラブコメでは終わっていないので読み応えは抜群ですが
反面、読む上で把握しておくべき情報が多いため「期待していたものと何か違う」と感じる読者もいるかも。
キャラに関しては、高校教師らしくきちんと大人としてヒロインや生徒たちに接しようとする主人公が好感触。
押しかけ嫁に振り回されたり、男性器を切断されそうになったりと置かれた環境には同情の一言ですが。
一方、そんな彼を取り巻くヒロイン陣は異世界種族がメインなだけあって癖の強さが目立っている印象。
本筋は政府や異種族どころか魔王の手下まで出張ってきて一筋縄ではいかない気配ですが…?