彼女の恋が放してくれない! 海空りく(GA文庫)
突如、不思議な手錠で繋がれてしまった主人公と此花つぼみが織り成すドタバタラブコメディ。
密着して離れることができなくなった男女。
というラブコメものでよく使われる一話完結ネタをあえて長編に使ってきた作品です。
基本的にはテンポのいいボケツッコミが主体で、時折入る過去話がアクセントになっている感じですね。
ちなみに手錠は魔法の手錠なので肉体以外はすり抜ける仕様です。
つまり、着替えは普通にできるしトイレのドアも閉めることができます。ちぇっ(ぇ
ラストは自分の感情に素直になった主人公とつぼみが結ばれてハッピーラブラブエンド。
失恋してしまった他ヒロインは残念でしたが、タイトルにちゃんと繋がる良いエンディングでした。
主人公は突如クラスメイトの少女と手錠で繋がれる羽目になった少年。
目つき&人相がとても悪く、その外見悪人度は親しい人間を除いて悪い評判しか立てられないレベル。
本人もそこは気にしているらしく、前髪を伸ばして片目を隠しているのだが、あまり効果がない模様。
更には、母親は死去しており、離婚して出ていった父親は女にだらしの無いロクでなし。
高校に入学するまでは悪い意味で絡まれるのが当たり前の生活。
…と、考えうる限りで酷い人生を送ってきたにも関わらず、非行に走ってない。
それどころか、人を思いやることができて一生懸命になれるあたり、かなり人間ができている。
今までの人生経験から、女性関係にはかなり硬く誠実な考えを持っていて、不本意ながら喧嘩に強い。
ヒロインは自虐クラスメート、活発幼馴染、堅物委員長。
一番のお気に入りはポニーテールなクラス委員長、宮下雅。
風紀の鬼の異名を持ち、中学三年時に同校の不良全員を更正させたという伝説を持つ。
しかし、この手のキャラにありがちな偏見思考はなく、見た目極悪人な主人公にも友好的な良い娘。
根が純真なのか、意外に漫画などに影響されやすく、思い込みや妄想にふけることが多い。
戦闘力は定規ひとつで机を真っ二つにできるというとんでもなさだったりする。
過去、己の生き方について悩んでいた時に主人公に救われており、それが好意の切欠だったり。
料理の腕前が壊滅的で、見た目はまともだが、味は生物兵器レベル。
評価はC。
よくこのネタで三巻も続いたものだと感心します。正直、ここまでできるならもっと続けて欲しかったくらいです。
主要登場人物全員がきちんとキャラが立っていて、良い奴らばかりだったのがよかったんでしょうね。
主人公やヒロインたちの心情の動きがきちんと描かれていたのも評価点。おかげで嫌味がありませんでしたし。
惜しむらくは終盤が駆け足だったがために、主人公とつぼみ以外のキャラが置いてきぼりだったところでしょうか。
見せ場のあった幼馴染の美咲はともかく雅とか噛ませ犬にすらなれないまま終わったからなぁ。
そして何より許せないのは、主人公の親友にして生徒会長の暦の性別が最後まで不明だったこと。
あの意味深な描写の数々はなんだったのか…!