食べないお嬢と魔術学園の料理番   駿河ゲンゾウ(富士見ファンタジア文庫)



魔術と包丁が交差する、新世代学園バトルファンタジーストーリー。
料理バトルではなく、食材を得るために冒険やバトルをするのでもなく。料理と学園バトルファンタジーという
噛み合わせが悪そうな二つの要素をきちんとストーリー的に意味のある形で両立させているのがグッド。
料理&食事描写は実に美味しそうで飯テロ極まりないですし、バトルパートの熱さも申し分なし。
武器が包丁+一芸特化を押し出した主人公のバトルスタイルも、見た目がシュールながら格好いいです。
ただ、料理人が包丁で人間を殺傷するのは正義ポジションとしては外面悪すぎではなかろうか…?
ラブコメ面は今のところ進展なし。ヒロイン側のフラグはバッチリ立っているようですが。

主人公は王立クライエス魔術学園の食堂で料理番を務めるスゴ腕の青年。
超がつく料理バカであり、料理のことになると周りが見えなくなることも珍しくない。
明朗快活で単純、一言で言えばアホっぽい性格だが、物事の要点を見抜く鋭さを有している。
また、誰に対しても変わらない態度で接するが、思ったことをそのまま口にするなどデリカシーに欠ける面も。
料理の美味しさから学園の生徒たちに愛されているが、同時に魔術の才のなさゆえにコケにされてもいる。
人殺しを厭わぬ組織に所属していた過去から、悪人には容赦しない主義で敵対する人間の生命の扱いが軽い。

ヒロインはツンデレ生徒会長、感情希薄な義妹、小悪魔な副会長。
一番のお気に入りは料理番である主人公の助手を務める義妹、メイ・フラック。
短く纏められた透明感のある銀髪が印象的な、可愛らしさがまず先行する出で立ちの美少女。
常に無表情で感情は希薄、節を一々区切って喋るという独特な口調、と謎めいた印象を他者に与えるが
義兄である主人公へは容赦なく毒を吐いたり手足が出たりと当たりは辛辣。
料理助手としての腕は文句なく一級品で、無表情のままのVサインが決めポーズ。

現時点(一巻)においての評価はC。
料理を題材にしている作品に外れなしというのが私の持論ですが、この作品も例に漏れずかと。
魔術バトルも目を惹きますが、料理を軸にした人間関係の進展は納得がしやすく、安らぎと優しさを感じます。
キャラに関しては、良くも悪くも料理バカだけど食べる人のことを大事に考える主人公が好感度大。
喜ぶ顔が見たいから、という信念を貫き料理を提供し続ける姿は一本筋の通った格好良さがありますね。
そんな彼の料理を食べて幸せそうな顔を見せるヒロインたちも無防備な可愛らしさに溢れていますし。
本筋はメインヒロインのレクティアが世界の均衡を乱す存在として世界最高峰の戦闘魔術師集団に
狙われているということもあり、しばらくは襲い来る刺客を撃退するという形を繰り返すことになりそう?