ここから脱出たければ恋しあえっ 竹井10日(角川スニーカー文庫)
何者かの陰謀によって集められた少年少女たちによる、密閉空間からの脱出ラブコメディ。
殺しあえ、ではなく恋しあえというあたりが実に馬鹿馬鹿しくて楽しい。
しかし軽いノリな設定やキャラに反して、その裏に隠された謎はかなりシリアス方面の様子。
一巻の時点で数々の謎と伏線が散りばめられ、けれども登場人物たちがやってることはラブコメ。
このアンバランスさがシュールでありながらも、読み手の興味を煽ります。
ラストは恋の力は偉大だね! なハーレムエンド。
主人公は突如謎の集団に拉致されて、密閉空間に閉じ込められてしまった少年。
家が(地元限定)金持ちなため、一応分類的にはお坊ちゃん。
が、それを鼻に掛けることはなくフランクすぎる人柄と好青年然したルックス、憎めない言動に大胆な思考回路。
といったリア充要素を兼ね備えているため恐れられたり親しまれたりな人気者。
ただし病み気味なブラコン妹がいるため、恋人などはできない模様。でもハーレム願望持ち。
しかしながら、貞操観念は強く軟派なんだか硬派なんだか。
幼少時は将来を嘱望されるほどの絵の才能を持っていたのだが、事故から妹を庇った際に腕を負傷。
日常生活に不便がない程度には回復したものの、自身の望む絵を描くことはできなくなってしまっている。
基本的に女性には優しいものの、自身のメイドである椛だけは例外。
ヒロインはツンデレ天才少女、天然クールな先輩、ヤンデレ妹、報われないメイド、親友な幼馴染、堅物先輩。
病弱恋脳姉、眼鏡ポエマー妹、男勝りなハーフ娘、主人公の絵オタクな大和撫子。あと一応男の娘?
まさか最終巻で新ヒロイン投入とは、やりおる!
一番のお気に入りは堅物で強面な先輩、聖宮葵子。
常に強気な表情で堅物な性格、更には口調は敬語ながらも攻撃的。
そのため、容姿はスタイル抜群の美少女でありながら、傍目には物凄く他人を寄せ付けない雰囲気がある。
しかしその実、意外に天然というか素直なところもあり、友達思い。
しかも、一度折れると非常にもろく、自虐思考全開になる。愛人気質というか、いろんな意味で重い女の子。
雰囲気に反して、部屋が女の子女の子していたりと、実は女子力が高い。
評価はA。
無茶だらけに見えて、後でなるほどと思える設定と魅力的なキャラクター、流れるような展開。
そして軽快なテンポや掛け合いと、竹井10日氏の持ち味が存分に発揮されていて素晴らしかったです。
まあ、最後の方は少々急展開すぎた感もありますが、着地は綺麗に決まっていたかと。
とりあえずハーレムスキーとしては、きちんとハーレムエンドで終わったことが何よりの評価点ですが。
しかし結局千早の身体の秘密はなんだったんだろうか。明確にヒロイン入りもしないままだったし。