この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に
駆り出されました
                            東雲立風(角川スニーカー文庫)



魔王すらも恐れる人類最強の九人が属する組織の一員である最強氷術使いによる波乱の学園潜入生活物語。
異世界召喚された少年少女たちが勇者に。しかし主人公は彼らを監視するために派遣された現地人。
しかも所属しているのは人間と魔族の両勢力から恐れられている少数精鋭の秘密組織。
そして肝心の実力は世界で九番目くらい、という捻りが利きながらも厨二心をくすぐる設定が興味深いです。
この設定が前提にあるからこそ、内容が単純な主人公最強ものになっていないわけですしね。
戦闘や暗殺を生業とするがゆえに、学園生活でトラブルを起こしまくりな主人公の姿も見ていて楽しいですし。
ラブコメ面は主人公自身は恋愛をする気がないものの、ヒロイン側の包囲網は着々と狭まっている模様。

主人公は人類最強の九人が所属する組織「災厄の数字」の九番目の災厄とされている少年。
新たな任務として日本から召喚された勇者たちを監視するために魔法学園に生徒として潜入することに。
銀髪銀眼と目立つ特徴がある上、女顔で身体も細く身長も高くないことからよく美少女と勘違いされてしまう。
真面目な性格で「災厄の数字」の中では常識人の部類だが、迂闊にドジを踏んでしまうポンコツな一面も。
同年代と接した経験が皆無なため人付き合いが苦手で、性欲こそ存在するものの色恋沙汰は無視している。
いつも組んでいた相棒が生活能力皆無であるがゆえに料理をはじめとした家事スキルはそこそこ高い。

ヒロインは心優しき勇者、天真爛漫な生徒会長、腹黒な第一王女、脳筋な相棒、布教脳な聖職者。
一番のお気に入りはハーレンス魔法学園の三年生で生徒会長を務める公爵令嬢、クラリス・ランドデルク。
艶やかな長いブロンドヘア、澄んだ碧眼、白磁の肌、そして完璧なプロポーションを有する美少女。
貴族でありながらも偉ぶらず、温厚で人当たりが良く、気配りができて女神のように優しい性格をしている。
四代公爵家の一つ、ランドデルク家の長女らしく人前では如才ない立ち振る舞いを見せているが
素は天真爛漫でお茶目な妄想ロマンチストであり、持ちすぎているがゆえに平凡で自由な人生を求めている。

現時点(三巻)においての評価はC。
全体の雰囲気は学園ファンタジーものの王道。しかし捻った設定が一風変わった読み味を与えてくれる作品。
主人公は氷術という物語の主役としては珍しい戦闘スタイルで無双しまくり、最強っぷりを見せてくれますが
上に八人いることが確定しているため嫌味がないですし、残念すぎる思考回路もギャップがあって面白い。
鈍感な彼に苦労しながらも、可愛らしい好意を見せるヒロインたちの華やかさも申し分ないですし。
本筋は敵対する転生者たちの組織の野望を叩くことに成功するも、敵首領には逃亡され決着はつかず。
世界の平和を乱さんとする複数の魔王や勇者の謎など不穏な要素もまだまだ残っていますし、先は長そう。
ただ、二巻以降タイトルが息していないというか、勇者の監視はどうなった感が…