辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる   三門鉄狼(GA文庫)



未来を書き換え出世を目指し、理想の生活のため、運命さえも操る辺境貴族の成り上がり譚。
大枠としてはファンタジー系の戦記ものですね。主人公が「書いたことが実現する歴史書」持ちということで
内政も戦争もイージーモードな展開になるのかと思いきや、書の使用には色々とルールが存在しているため
頭と足を使って試行錯誤する努力がちゃんと描かれているのが地に足がついている感じでグッド。
チートアイテム頼りではなく、主人公自身の苦労や能力がきちんと活かされているのは好感触です。
その一方で、下準備重視な話の性質上、戦争戦闘描写はかなりあっさりしたものになっています。
ラブコメ面は主人公が色恋に意欲を見せないこともあって、今のところ進展はなし。

主人公は偶然召還した刻の精霊クロノと半強制的に契約を結ばされ、未来を書きかえることのできる
歴史書を手に入れたことから、理想の生活の為に邁進することになった辺境の貧乏領地を治める若き領主。
温厚で思慮深く慎重な性格で、口が上手く、誰に対してもしっかり気を使う気質の持ち主。
忠義心とは無縁で、安心安全、無難無事を願い「なるべく楽して楽な人生を手に入れたい」と考えているが
決して自堕落なわけではなく、やるべきことはきちんとやるし、望む結果のためならば苦労も戦いも厭わない。
貴族としては頭脳労働タイプで、観察眼と判断力に長け、戦略ゲームでも負けなしの実績を有している。

ヒロインはポンコツ精霊、お転婆な従妹、ロマンス好き王女、義理堅き騎馬民族娘。
一番のお気に入りは父王が病床ゆえに国務を代行している第一王女、リーゼロッテ・イリスガルド。
絹糸のような銀色の髪、透き通るような白い肌、そしてアメシストのような紫の瞳を持つ美少女。
公の場では毅然とした態度をとって国家を背負うという重圧に耐えているが、時折貴族のパーティに紛れ込み
臣下の忌憚ない意見を聞いたり、人間関係を観察したりと行動力のある面を見せることも。
私人としてはロマンスが好きで、色恋沙汰となると妄想に突っ走ってしまうこともしばしばだったり。

現時点(二巻)においての評価はC。
楽に暮らしたいという夢のために頑張っているのに、その活躍ゆえに意に反して多忙になっていく主人公。
というコミカルな構図が楽しいです。勿論、本人からすればどうしてこうなった状態なのでしょうが…
そりゃ実績をどんどん積んでタイトルに違わぬ成り上がりを果たしていけば当然のことですわな。
脇を固めるヒロイン陣も彼にそれぞれのスタンスで期待をかけつつ、好意を向けているようですし。
本筋は一巻で外敵の攻勢を跳ね返し、二巻で内乱を見事に鎮めようやく国の状況も上向き始めた模様。
ただ、エピローグとあとがきを読んだ感じだとこれで終わりっぽいようにも取れるのが不安なところ。