キングメイカー!   串木野たんぽ(GA文庫)



歩兵の少年が、少女を助け真の英雄へと駆け上がる劇場型バトルアクションストーリー。
観客の盛り上がりが選手の力に変換されるバトルスポーツ、という設定が中々興味深いですね。
戦闘力以外にも演技力や演出力といった、エンターテインメント能力が重要というのはわかりやすい上に
内外両方の盛り上がりに直結しているので、主人公視点だけではなく、観客視点でも感情移入できますし。
ラブコメ面はもう完全に憩綾の一強状態。というか他ヒロインには基本的に恋愛感情ないですしね現状…

主人公はバトルスポーツ・ヨルムンガンドにおいてチームの引き立て役をこなしつつ英雄を目指す少年。
真面目で律儀で努力家な性格。誰かの役に立つことに喜びを覚えることができる優しさの持ち主だが
チームに尽くし過ぎたり、勝ち目のない助太刀に動いたりと、自分の事よりも他人の事を優先しがち。
その一方で、戦場の真ん中で自身の光を放ち輝きたいという相反する願いを抱えてもいる。
直接的な戦闘力は一流に及ばないが、魔導の制御力は神技級であり、軍師としての能力も高い。

ヒロインは戦闘狂な剣豪娘、自由奔放な幼馴染、明朗快活な看板娘、ポンコツ聖女。
一番のお気に入りは主人公が下宿先にしている小宿の一人娘にして看板娘、憩綾。
やや吊り気味のまなじり、肉の薄い桜色の唇、首の後ろでくくった髪、すらりと伸びたたおやかな手足。
と、道具立てはクールそのものだが、口元にたたえる闊達な笑みが冷たい印象を打ち消している美少女。
看板娘を張っているだけあって明るくお茶目で人当たりが良く、その上面倒見と包容力も兼ね備えている。
主人公に対しては、どんなに心配であっても家で待ち、帰ってきた彼に「おかえり」と言うのが信条。

現時点(二巻)においての評価はC。
やられ役としてチームを引き立てるポジションにいる少年が英雄への成り上がりを目指す!
という主人公のストレートにして共感しやすい動機と、まっすぐな性根に応援したくなる魅力がありますね。
それぞれの立ち位置で主人公に寄りそうヒロインたちも魅力的で良い娘ばかりですし。
ただ、いくら核となる部分さえ分かっていれば後はノリで流せるとはいえども、肝心のヨルムンガンドという
競技自体の説明や描写がふわっとしすぎていてシステムや認知度がわかりにくいのが難点でしょうか。
本筋は正直一巻が綺麗に纏まり過ぎていて二巻出せるのか? と危惧していましたが、新キャラを演出する
という形で話が続いたのには納得の一言。主人公自身の精進も継続していますし、続きに期待。