ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ 上総朋大(富士見ファンタジア文庫)
天才的な知略と不屈の意志の力で残酷な世界の理を覆す戦記ファンタジー。
大枠としては戦記ものですね。ただ、人間が他種族の家畜や奴隷として虐げられているという世界観なので
理解者もいるとはいえ、人間の主人公にとってはかなりハードモードな話になっています。
だからこそ彼の天才軍師としての手腕が輝き、活躍を見せ認められていく展開が映えるわけなのですが。
ラブコメ面は主人公の主人にして吸血鬼のヘネシーとの身分差ラブロマンスが見所。
主人公はヴァンパイアの国で奴隷兼血液供給源として生かされているだけのヒトだったが
ヴァンパイアの女侯爵であるヘネシーに見初められ彼女の侍従贄として抜擢された少年。
ヒトが尊厳を持てる国を作るという夢を持っており、そのために本を読み漁り、智を磨き続けている。
外見は艶と癖のある黒髪に、知性を感じさせる黒い瞳を持つ絶世の美男子で
常に冷静で落ち着きがあって理知的な性格をしており、自身を天才と称するほどの自信家。
厚顔無恥な言動が多いが、学習意欲が強く、内政・外交・軍略に優れ、洞察力や分析力も高く
度胸も抜群、更には気遣い(人心掌握力)に長けていたりとその才の大きさは疑いようがない。
ヒロインはヴァンパイアの公女。サブに総務局長、気弱な内政官、勇猛な兵長、無口無表情なメイド長など。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(二巻)においての評価はC。
とにかく人間に優しくない世界が舞台であるため、序盤の描写がかなりキツイものになっていますが
そんな現状ではどうにもならないマイナス要素が大きいがゆえに、ヒトが尊厳を持てる国を作る!
という大望を抱き、夢へ邁進する主人公の姿が熱く眩しく、そして応援したくなります。
種族という固定概念にとらわれず彼の才能を見抜き、拾い上げ、段々惹かれていくヘネシーの愛らしさや
仕事では格好良く有能でこそあるものの、癖のある仲間たちの存在感も抜群ですしね。
本筋は内戦を制し、ヴァンパイアの国を統一した主人公陣営ですが、解決すべき問題は未だ多いですし
暗躍する魔女の策謀による他国合従軍の脅威など、まだまだ平和な世界は遠そう。