お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。   凪木エコ(富士見ファンタジア文庫)



おひとり様ライフを守るべく奮闘するひねくれボッチートな少年の青春ラブコメストーリー。
ぼっち最高主義な主人公と、そんな彼に興味を持ち、交流したいがために寄ってくるヒロインたち。
と、一見するとよくあるスクールカースト系学園ラブコメっぽく見えますが…
主人公が押しや状況に安易に流されたりせず、あくまでおひとり様至上主義を貫かんとする姿勢を
崩さないところがいいですね。立場や信条の割にコミュ力やスペックが高いのも面白い。
ヒロインたちも基本空回りしてばかりなので押し付けがましさが上手く中和されているのもグッド。
ラストは独りの時間もそれ以外の時間も謳歌する生活を続けていこうと思う主人公なのだったエンド。
ラブコメ的には決着つかず、タイトル通り「お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ」で終了。

主人公は孤独を恥じず、集団に属することのストレスを何よりも嫌うおひとり様至上主義な少年。
不愛想かつドライな性格で人に関心がないが、なんだかんだで困っている人には手を差し伸べることも。
また、メンタル強者で、嫌なことには嫌と言えるし、自分が正しいと思えることをハッキリと言える。
自分の望みを叶えるためであれば、不本意なことであってもちゃんとやるべきことはやるタイプ。
その一方で、自分の独りの時間や居場所を奪ったり、価値観をバカにする人間には牙を剥く癖がある。
なお、必要がないから人に話しかけないだけで物怖じはしないしコミュ力自体も何気に高い。
色恋に関しては人並の感性だが、独りでいることのほうが大事という考え方をしている。

ヒロインは博愛主義者な学園のアイドル、隠れサブカルオタクなクール娘、乙女チックお嬢様。
サブにムードメーカーな級友、合法ロリ先生、アホの子実妹、おっとり看板娘、子供好きなギャルなども。
一番のお気に入りは趣味がドンピシャに合うことから主人公に懐いたクール美人、羽鳥英玲奈。
大和撫子を彷彿とさせる長くまっすぐ伸びた黒髪にキレ長で大きな瞳、そして長身かつ抜群のスタイル。
更には服を十二分に押し上げる巨乳が同年代の女子より総じて大人びた印象を周囲に与える美少女。
普段はクールな雰囲気を身に纏い、口数少なく受け身な大人びた態度をとっているが
それは学校生活におけるキャラ作りであり、実態は気弱で大人しいだけのサブカル女子。
同好の士に対してはテンション爆上がりで周りが見えなくなるレベルで熱く語ってしまう一面も。
興奮すると握った拳や両腕を自分の胸がへしゃげるくらいに押し付け続ける癖がある。

評価はC。
やっていること自体は変人そのそれなのに、我が道を行く主人公の唯我独尊っぷりが一周回って格好いい。
ぼっち至上主義の割にはなんだかんだでヒロインたちと関わってはいますが、これは展開上仕方ないですし
そもそも彼には卑屈さが欠片もなく、根本的な思想は一切ブレていないので然程気にならずに済みました。
主人公のキャラがこうであるがゆえに、スクールカーストにありがちな不快なリアリティも皆無でしたしね。
そんな彼に関わろうとするも中々報われず、しかしそれでも楽しそうなヒロインたちも可愛かったです。
本筋はまだまだ続けられるだけの余地がありながらも四巻打ち切りと残念な結果になってしまいましたが
元々ストーリー性が強くない作風だったこともあってか消化不良感もなく綺麗に終わった印象。
主人公も独り好きを一番上に置いたままという前提で「集団行動も悪くない」と価値観を増やしただけで
芯は一切ブレなかったですし。まあ、あえて言うならラブコメ面をもうちょっと進展させてほしかったですが。