理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?   三河ごーすと(MF文庫J)



世界最強の娘と、表向き一般人の父。魔法学園を舞台にした父娘ファンタジーストーリー。
人類に仇なす敵と戦う魔法騎士を育成する学園が物語の舞台になっている学園バトルファンタジー。
というのが大枠なわけですが、物語開始時点で人類は地下に追われて生存圏&生存者は激減状態。
と、世界観的には相当詰んでる感が強いため、ストーリー的にはかなり重い感じですね。
設定が良く練られているからこそ絶望感マシマシで希望が見えないのがキツイ。
主人公も娘の雪奈も人類最強クラスの実力者なのに全然余裕じゃないし安心もできないという。
ラストは、破滅を乗り越えた世界は子供たちが大人へと育つ次の時代へ、エンド。
ラブコメ的には十数年来の相棒であるカチュアと結ばれ、結婚。子宝にも恵まれて幸せいっぱいで終了。

主人公は雪奈の父親で専業主夫だったが、娘の保護者として第一魔法騎士学園に通うことになった青年。
触れた相手の異能を消去する「抹消体質」を持っており、彼が裏切れば人類は終わると評されている。
機械的な表情と常に引き締まった印象を与える鋭い目つきが特徴の二十九歳。
杓子定規なまでに真面目な性格で、誠実かつ紳士なのだが、女心には疎く、デリカシーがない。
表情には出さないが義娘である雪奈を溺愛しており、心情的優先度では何よりも彼女を上に置いている。

ヒロインは世界最強のファザコン娘、ツンデレ理事長。サブに心優しき衛生兵、気さくな猫娘。
一番のお気に入りは第一魔法騎士学園の理事長にして主人公の親友、カチュア・ヴェルミオーネ。
二十代後半ながら、未だ十代にさえ見える若々しく瑞々しい赤髪紅眼の女盛り美女。
職場では謹厳実直かつ品行方正。きっちり自分の仕事をこなし、多くの部下を使いこなす優秀な管理職だが
プライベートでは勝気で短気、そして主人公への長年の恋心をこじらせている残念美女だったりする。

評価はC。
平和な日常、それがあっさりと崩れる瞬間、そして容赦なく始まるリアルでシビアな命懸けの戦い。
話の展開における緩急がこれでもかと効いており、それゆえにドラマチックな読み味が楽しめる作品。
キャラに関しては、世界最強クラスの実力者だけど精神的に幼く父親ラブなメインヒロイン雪奈と
そんな彼女に父親として甘々だけど任務では容赦のない主人公のギャップコンビが実に印象的。
共に戦う仲間たちも魅力的ですし、彼らには是非ハッピーエンドを掴み取ってもらいたいと素直に応援できました。
本筋は世界観とメインキャラ達の背景がガチシリアスなだけに、終始重い空気が漂いっぱなしで
これ本当にハッピーエンドになるの? と不安しかなかったですが、終わってみれば犠牲こそ多かったものの
後味スッキリな、未来への希望に満ち溢れたハッピーエンドに仕上がっていた印象。
ただ、謳い文句のひとつであった「年の差ラブコメ」は事実上皆無だった気が…