美女と賢者と魔人の剣   片遊佐牽太(ぽにきゃんBOOKS)



異世界で出会う美女とともに、転移者の青年が強大な魔人に挑む冒険&バトルファンタジーストーリー。
異世界転移、主人公だけのレア能力、人外との戦い、と要素だけ抜き出すとテンプレ的にはありますが
主人公が元社会人ということもあり、単純な希望と爽快感に満ち溢れた冒険とはいきません。
実際、恩人の美少女が生贄にされたり仲間の重装剣士が犠牲になったりと重いイベントも発生しますし。
とはいえ、正統派ファンタジー世界特有の魅力である冒険の旅へのワクワク感はちゃんと備わっていますし
仲間になる面子は美女ばかりと華やかさも申し分ないので読後感は悪くないです。
ラストは己が欲のために暗躍していた事の元凶たるラスボスを撃破し、そして賢者と美女たちは世界を守るために
転移門のある場所に留まりながら、新たな夢として新しい街づくりを掲げるのであったエンド。
ラブコメ的には肉体関係を持ったヒロインこそいるものの、明確な恋人関係成立まではいかずに終了。
まあ、将来的には嫁三人(+現地妻一人)になることはほぼ間違いないと思われますが。

主人公は謎の老人によって異世界であるフロレンスに転移させられてしまったサラリーマン。
得られる情報を整理し考えてから行動する、なんでも冷静にその場の最適解を求める性格。
自分に自信を持っているため、会社員時代の癖で他人に諂へつらうことが少なく言動がぞんざいになりがちだが
一方で変に身の程を弁わきまえているところがあり、出来ない理想よりもできる現実を優先するところがある。
本人は否定するが女性(特に巨乳の美人)好きであり、目の前の据え膳には手を伸ばしてしまうタイプ。

ヒロインは男装の黒髪美女、天真爛漫な赤毛魔法使い、堅物な金髪聖騎士、眼鏡美人な魔人。
一番のお気に入りは白銀の戦乙女の異名を取るハーランド王国の聖騎士、セレスティア・パスカリス。
年若くして実力を認められていることが示すとおり、重装騎士としては比類無き能力を持っている。
頭には装飾のある額当てに長い金髪。身体には足下がスカート状になっている白い重装鎧に長剣と
武装時の外見を一言で表現するならばまさに「戦乙女(ヴァルキリー)」が相応しい美女で
見た目と役職のイメージ通り、口調は常に堅く、生真面目で高潔と、騎士の鑑のような性格をしている。
その一方で、買物に浮かれたり、小さなころからの夢がお菓子屋さんだったりと女性らしい一面も。

評価はC。
この手のステータスを表示する系の作品は、その部分は目が滑るだけの行数稼ぎになっていることが多いですが
当作品は主人公の「あらゆるモノの状態を見抜く能力」と連動してきちんと活かされているのがよかったです。
書かれていること全てに意味があり無駄がないので土台がしっかりしており、物語に入り込みやすかったですし。
キャラに関しては、勢いで行動せず、常に頭をしっかり使って困難を打破する主人公の安定感がグッド。
ヒロインたちも戦いの場では大人びていながらも、日常では年頃乙女な一面を見せてくれるのが可愛い。
本筋は四巻完結ながら起承転結がしっかりしており、伏線や因縁の消化もキッチリしていたのがグッド。
まあ、最終巻発売まで前巻から二年かかったのは内容を思い出す手間もあり、マイナス点でしたが…