精霊幻想記 北山結莉(HJ文庫)
剣と魔法の世界を舞台に最強の孤児が勇躍する、異世界転生ファンタジーストーリー。
異世界転生、複数人の勇者召喚、底辺からの成り上がり、主人公無双、とお約束要素盛りだくさんな上
主人公自身も母親の敵討ち、前世の恋慕、冤罪、と背負うものが多すぎて暗いシリアス成分が濃い目であり
また、世界観が罪なき善人に優しくなく、不快なキャラがかなり多いためストレスが溜まりやすいですが
その分溜めの時期を越えてからの主人公の活躍の数々による爽快感が映えている印象。
ラブコメ面は現状主人公がようやく前向きになりつつあるものの、未だ多忙ゆえに恋愛に積極的になれずな状態。
とはいえ、一夫多妻ありな世界観ですし、ハーレムエンドに期待したいところ。
主人公は七歳の時に自分がかつて日本で暮らす大学生であった前世の記憶を思い出した孤児。
見た目の年齢にそぐわない丁寧な言動で物腰穏やかに他者に接するのが常になっているが
転生してからの幼少期、スラムで最底辺の身分として生きてきた経験があることから
実際は人間不信気味かつドライであるがゆえに自己主張しないようにしているだけという部分が大きい。
その一方で、ひたすら前へ前へと努力し続けることができる実直さと真面目さがあり
また、根がお人よしであるため時折自分が正しいと思う行動を感情のままにとってしまうことも。
容姿端麗、紳士的な態度、戦闘力も高いとあって異性から好意を持たれやすいが、鈍感。
ヒロインは初恋の幼馴染、天真爛漫な恩師、元奴隷の狐娘、純粋無垢な精霊、銀狼・エルフ・ドワーフ三人娘。
健気な村娘、引っ込み思案な妹王女、生真面目な姉王女、商会会頭の令嬢、聡明な勇者、小悪魔な王女。
一番のお気に入りは若くして王立学院の教師を務めていた才媛、セリア=クレール。
年齢の割に低い背と幼児体型、ふわりと背中まで伸びた白銀の髪が冬の妖精のように愛らしく
黙っていれば物静かな深窓の令嬢に見えるが、貴族でありながら相手の身分をまるで気にせず
気さくで奔放と親しみやすいさばさばした性格。ただし、色恋に関しては結構乙女。
五巻にて、家の為に望まぬ結婚をしようとしていたところを主人公に颯爽と攫われている。
現時点(二十六巻)においての評価はB。
降りかかる理不尽や困難にもくじけず、強き想いを胸に秘めて前に進み続ける主人公が格好いい。
そんな彼に惹かれるヒロインたちの内面描写も秀逸で、どの娘も魅力的に見えますし。
ただ、敵味方問わずヘイトを集めるキャラが話の都合か、退場することなく長々とのさばる事が多いため
恐らく終盤まではフラストレーションが解消されないであろうことが読む上での難点でしょうか。
本筋は再開した面々と交流と情報交換をしつつ、過去の冤罪と決着をつけた主人公。
しかしそれによって姉王女は窮地に立たされることとなり…?