現実主義勇者の王国再建記   どぜう丸(オーバーラップ文庫)



異世界に召喚された少年による、革新的な異世界施政ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界召喚ものになりますが、勇者として召喚されながらも魔王討伐を目的とするのではなく
国を立て直すために王位を譲られて内政に励む、というコンセプトが一風変わってますね。
話の中では戦争も起きますが、戦闘そのものよりも準備や後処理といった事務面に力が割かれており
主人公が現代日本で蓄えた知識と現実主義な性格を活かして国を富ませていく姿が中々に痛快。
お約束の内政チートの数々は勿論、マジックアイテムを使って国営放送をやるなどの奇抜な発想も面白い。
ラストは世界大戦に勝利して世界を平和に落着させ、穏便に次代にバトンタッチしてハッピーエンド。
ラブコメ的には最終的に八人の妻を得て、子宝にも恵まれて終了。

主人公は現代日本から剣と魔法の異世界に勇者として召喚されるも、王となってしまった少年。
物事を割り切って考えるところがある現実主義な性格をしており、過剰な富も名誉も求めず
ただ平穏な暮らしを望んでいるが、祖父の遺言もあって家族に対しては損得勘定抜きの拘りを見せる。
召喚される前は社会経済学部に受かっていた(将来の夢は地方公務員)だけあって内政能力が高く
自分にできること、できないことがちゃんとわかっていて、できないことはできる人に任せることができる。
私人としては結構気さくでノリも良いが、女性関係に対しては優柔不断でヘタレ気味。

ヒロインは生真面目な元王女、忠義厚きダークエルフ、お姉さん歌姫、子狸公女、天真爛漫な黒龍。
聡明な聖女皇、勝気な虎妹、快活な冒険者。
一番のお気に入りは美と歌と踊りにて才を示し登用された歌姫、ジュナ・ドーマ。
大人びた柔らかな雰囲気を纏っている、スタイル抜群でゆるふわロングの青髪美少女。
物腰穏やかで気遣いができる上、年齢以上の落ち着きと包容力があり、アドリブ能力も高いが
実は実年齢よりも大人びて見られてしまいがちなことを気にしている。そして怒らせると怖い。
海軍大将エクセル・ウォルターの孫娘にして王国海軍海兵隊長というもう一つの顔を持っている。

評価はC。
色々な面で少々ご都合主義が目立つものの、タイトルに違わぬ現実主義主人公による王国再建模様が
他に見ない新鮮な読み味と、地に足の着いた読み応えを与えてくれる作品に仕上がっていたかと。
世界観はあくまで剣と魔法のファンタジーなので戦争や魔物との戦いもあり、演出の華は不足なかったですし。
キャラに関しては、苦しみながらも毅然として王道を歩む態度を見せ続ける主人公が頼もしく格好良かったです。
そんな彼を公私にわたって健気に支えるヒロインたちの出来た嫁っぷりも申し分なし。
本筋は世界大戦の決着から後始末、その他諸々の問題解決、更には次代への引き継ぎと
細部に至るまで消化不良感が一切ない最終巻であったため、読後の感想は満足の一言。