うちの居候が世界を掌握している!   七条剛(GA文庫)



全てを手に入れた少年が、唯一手に入れられなかった「家族」を手に入れようとする物語。
会社関連のトラブル話の割合も多いですが、基本的にはアットホーム系ラブコメディですね。
主人公の性格上、淡々と話が進むのでやや起伏には欠けますが、毎巻話がきちんと纏まっているので読みやすい。
個人的には、主人公のギャグレベルのチートっぷりがお気に入り。戦闘力や知力を内包した権力こそ正に最強。
まあ、少しばかり設定に無茶があるのも事実ですが、そこは不快感のないギャグ解釈で許せる範囲ですしね。
ラストは自分の会社を犠牲にして世界を救った主人公と仲間たちはまた一から出直すのだったエンド。
ラブコメ的には五年後のエピローグ時点でも決着つかずで終了。

主人公は中学生でありながら、世界レベルの大企業の創始者にして社長な存在。
正にタイトル通り世界を掌握していると言えるだけの力をその手に持っている。
母親による英才教育によって頭脳面ではチートっぷりを誇るも、情操教育を受けずに育ったため
喜怒哀楽等の感情面に乏しく、飄々として達観とした態度が常。また、世間一般の常識にも欠けている。
そのため、時々真顔で相手の女の子を口説いてるとしか思えない臭い台詞を吐いたり
更には、美少女とのラッキースケベやラブコメイベントが起きてもまるで動じないなど、色んな意味で無敵。
ただし、体を鍛えていないため頭脳面とは正反対に運動能力は低い。

ヒロインは人気者な長女、クールな次女、天真爛漫な三女、天才プログラマー、不憫な社長秘書。
ハニートラップスパイ、歌姫な義妹、天才デイトレーダー。
一番のお気に入りは、才色兼備な社長秘書、ルファ・マルティーニ。
ドイツ人と日本人のハーフで、十七歳にして社長秘書を務める才女であり、語学をはじめとして高い能力を持ち
大企業のトップ二人からも認められている。しかし私生活ではいたって庶民的な感性の持ち主。
また、ややチョロイところもあるようで、主人公から褒められるとすぐに舞い上がってしまうところも。
トップ二人が色んな意味で規格外なため、いつも苦労していて、日本の温泉が癒しになっている。

評価はB。
設定の滅茶苦茶さに反し、展開は手堅くわかりやすい構成になっているのでスッキリと読めました。
主人公が財力、権力、暴力、知力、決断力、判断力を兼ね備えているのでどんな場面でも安心感は抜群でしたし。
ただ、それゆえにどんなトラブルが発生してもハラハラ感を覚えなかったのが問題といえば問題でしょうか。
ヒロインのほうは、皆それぞれ嫌味のない良い子ばかりなので、華やかさという点はバッチリ。
主人公が常に泰然自若としているので、ヒロイン側ばかりがアプローチを頑張っているのも微笑ましかったですしね。
本筋は一巻の頃からあった伏線を十六巻かけて回収し、ハッピーエンドに導くというこれ以上ない綺麗な形で完結。
不満があるとすれば結局恋愛面で明確な進展がなかったことですが、これは仕方ないと納得できる点も。
フェアにいくなら、最年少のヒロイン候補が土俵に上がれる(五年後)まで決着はつけられませんしね。