史上最強の大魔王、村人Aに転生する   下等妙人(富士見ファンタジア文庫)



元最強の大魔王にして現村人な少年がおくる、学園ヒロイックファンタジーストーリー。
大枠としては学園ファンタジーに勘違い要素を加えた主人公最強ものといったところでしょうか。
主人公が元最強の大魔王な上、現代世界は古代世界よりも魔法の力が劣化しているという設定であるため
価値観と実力の差からくる周囲とのギャップが酷いことになっており、事あるごとに規格外の結果を出して
転生してまで望んでいたはずの平凡な生活からどんどんかけ離れていく流れが面白い。
まあ、主人公の学習能力がなさ過ぎなので毎度の「なんでこうなった?」主張が少々鬱陶しい感はありますが…
ラストは宿敵たる邪神を別次元世界へと封じ、その後史上最強の大魔王へと転生した村人Aは
仲間たちの元へ帰還し、世界を滅ぼさんとする敵との新たなる戦いへと身を投じるのだったエンド。
ラブコメ的には想い人である勇者リディアと実は結婚していたも同然(子供がいた)であったことが判明。

主人公は平凡な人生に憧れ、数千年後に村人として転生した神話に名を刻む史上最強の大魔王。
友達思いで義心が強く思慮深い性格だが、常識が古代基準であるため物事をやり過ぎることが多い。
前世において魔王と呼ばれるほど特別な存在になったことで様々なものを失った経験から
特別であることを嫌い、そうなることを避けようと心掛けているが、上記が原因で大体失敗することに。
友達作りの為に、両親の友人からのアドバイスで、誰に対しても微笑を忘れず、敬語で語り掛け
ありとあらゆる動作を無駄に洗練させて優雅に振る舞うようにしている。

ヒロインは正義感の強いエルフ、腹黒サキュバス、脳筋馬鹿勇者、オレっ娘勇者。
サブに美貌の女王や姉貴分な獣人なども。あと、短編でも何人かヒロインが増えている模様。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はC。
最強の力と非常識を携えて我が道を歩んでいく元大魔王な主人公の姿が痛快にして愉快。
読者視点だとどう考えても彼の望む平凡は不可能だとわかるのですが、ぶっちゃけ完全に自業自得なので
全然同情する気にならないですし、むしろ「いいぞもっとやれ」と彼のサクセスロードを応援したくなりました。
周囲を彩るヒロインたちも、可愛らしさに加えてキャラの濃さがあるので存在感負けしていませんでしたしね。
ただ、話が進むごとに敵にしてやられる事が多くなり、最強感が薄れてタイトル詐欺になっていたのが残念。
最後に帳尻を合わせてはいましたが、逆を言えば最初と最後だけってことですしね…
本筋は締めが「俺たちの戦いはこれからだ!」な典型的打ち切りエンド風でしたし
色々消化不良な点が残ったままでの完結ながら、話自体は綺麗に纏まっていた印象。
そもそも、この話って無双物語ではなく、成長物語としての面に重点が置かれていましたからね…