ファイフステル・サーガ 師走トオル(富士見ファンタジア文庫)
絶望の未来を塗り替えるために、玉座の頂を目指す英雄たちの物語。
大枠としては中世風の異世界を舞台にしたファンタジー戦記もので、異種族や魔王も登場します。
また、ダブル主人公方式で話が進むため、複数の主観が奥行きのある世界観を作り出していますね。
メイン主人公がよくある武力や知力特化型ではなく、商才に長けているというのも中々に新鮮。
大目標を魔王討伐としながらも、他国とも敵対するなどの構図の複雑さも読みごたえがあります。
ラブコメ面は二巻でメインヒロインのセシリアと結婚式を挙げ、婚姻が成立し正妻が確定。
四巻ラストではエルフとの協力関係を結ぶための条件としてミーリエルとの結婚話が持ち上がりましたが、さて。
主人公は最強と名高い傭兵団「狂嗤の団」の団長の息子。
魔王再臨という絶望の未来を回避するため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約することに。
年齢の割に落ち着きがあり思慮深い性格。また、商人を師としていたことから合理的な思考が強いが
決して情が薄いわけではなく、救える命は救えるに越したことはない、と考えており
ここぞという時は自身の身体を命懸けで張ることも厭わない思い切りと勇気の持ち主でもある。
一介の傭兵としての能力はそれなりだが、好奇心の強さからくる物怖じのなさ。
そして、長年旅をしてきて培った経験と人脈、交渉&調整能力と、人の上に立つ者としての資質は高い。
ヒロインは聡明な公爵令嬢、勝気なエルフ幼馴染。
あと、一巻ラストで捕えた隣国王姉がヒロイン昇格候補?
一番のお気に入りは主人公と共に五芒国を旅した幼馴染のエルフ弓手、ミーリエル。
実年齢は二十八だが、見た目は十五歳くらいにしか見えない、エルフらしく目鼻立ちの整った美少女。
気が強く好奇心旺盛で、人間と距離をとっているエルフの出身でありながら人間である主人公と
諸国を旅し、現在は彼の協力を得て素性を隠しつつも傭兵団に入団し弓の名手として活躍している。
エルフのわりにこらえ性がなく、待っているのが苦手で一箇所に留まっていられない性格。
現時点(四巻)においての評価はC。
これぞ正に骨太な正統派王道ファンタジー英雄譚といった勇壮な世界観と雰囲気がたまりません。
主人公が特化型ではないため単純明快な爽快感には欠けますが、その分地に足の着いた活躍が楽しめますし
メインヒロインの「自分の死を夢見る」という能力が上手く活用されているのも面白いです。
ただ、戦記ものの常とは言え、人物名を筆頭に頭に入れるべき情報量が多いのが少々難点かと。
ダブル主人公方式だから余計に負担がかかるようになっていますしね…
本筋は遂に攻め込んできた魔王の先兵を撃退するも、未だ敵勢力は健在と予断を許さない状況。
敵になるか味方になるか未だ不明な三人目の主人公も登場し、自体は更に混迷してきましたが…?