もう異世界に懲りたので破壊して少女だけ救いたい 永菜葉一(角川スニーカー文庫)
悪知恵と策略で魔術を破り、腐った世界をぶち壊す、落ちこぼれ召喚者の異世界破壊録。
大枠としては異世界召喚ものですね。異世界へのアンチテーゼが物語のテーマになっており
世界を救う方法が天使の転生者を生贄にすることだったりと、裏事情はかなり重め。
その一方で、主要キャラたちによる普段の掛け合いはコメディオンリーであるため
シリアスパートとのギャップが効いており、話が進むごとにグイグイと惹きつけられます。
ラブコメ面はダブルヒロインとの三角関係で進行していく模様。
主人公は異世界召喚されるも魔術が使えず、課題も失敗続きの落ちこぼれとなってしまった少年。
退学を回避するために、学院長命令で世界を救ってくれる『天使の転生者』を捜すことに。
生活力皆無で常に自堕落なぼっちで、プライドがなく長いものには巻かれる性質で生き汚い。
そのくせ負けず嫌いで調子に乗りやすく、誰が相手でも居丈高に言いたい放題。
縋れる相手には全力で縋る、と小物クズの見本のようだが、自分より弱い者のためであるならば
世界全部を敵にすることも厭わない義心の持ち主でもある。
色恋に関しては基本口は達者なものの、イザとなるとヘタレる純粋培養の童貞。
ヒロインは中二病のお姫様、堕メンズウォーカーな天才児。
一番のお気に入りは百年ぶりに飛び級を果たした天才児な十二歳、セラ・マリーベル。
小柄であどけない顔立ちに、朝焼けのようなブロンドヘアーが麗しいアイドル顔負けの美少女。
年齢の割に物怖じせずしっかり者で勉学や魔術のみならず家事にも長けている完璧超人なのだが
ダメ人間を放っておけない悪癖があり、口では厳しいことを言いながらも、頼られると割とあっさり
押し切られて甘やかしてしまい、毎回主人公やクローディアの世話を焼いてしまうところも。
主人公が異世界召喚されて日が浅い頃、彼と不可抗力でキスをした経験がある。
現時点(一巻)においての評価はC。
基本クズでヒモ気質な主人公、中二病全開なポンコツお姫様、ダメ人間製造機な十二歳。
と、メインを張る三人の癖が良くも悪くも強すぎるため、彼らの会話が愉快でたまりません。
というか、十二歳という若さで問題児二人の世話を焼くセラの姿には尊さすら感じる…!
勿論、世界の正しさに反逆し、弱者の味方として奮闘する主人公のイザという時の格好良さは
申し分ないですし、クローディアとセラの意外なヒロイン指数の高さも侮れませんが。
本筋はいずれ復活する世界を滅ぼさんとする終焉の竜をどうにかするために奮闘する主人公。
という構図で進んでいくようですが、世界の不条理を筆頭に前途は多難の様子。