変態王子と笑わない猫。   さがら総(MF文庫J)



不思議な力を持つ笑わない猫像に振り回される少年少女たちの物語。
変態な主人公の主観が地の文メインということもあり、全体的にコメディ成分が強いです。
ただ、要所要所で猫像の不気味な部分や複雑に絡み合った人間関係がピックアップされたり
主人公独自の言い回しが不思議な文体となって、単純なラブコメでは終わっていない感じですね。
内容を完璧に理解するのは難しいけど、気がつけば引き込まれている、そんな感じの文章だと思います。
勿論、ヒロイン達の可愛らしさも十分なので、ラブコメ目当てで読んでも損はありません。
そしてカントクさんの挿絵は神。サービスカットも結構ありますし、十二巻ラストの挿絵は素晴らしかったです。
ラストは長き物語の果てに本音を失った少女が笑顔を取り戻し、ハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの筒隠月子と結ばれて終了。なお、数年後他ヒロイン含めて事実上の同居中。

主人公は変態という形容がよく似合う高校生の少年。
実に度し難い変態で、心の中ではいつも女の子のことばかり考えている。
物語開始までは建前で本音をうまく隠していたのだが、猫像に建前を引き取ってもらってからは一変。
変態な言動を隠すことをしなくなり、周囲からは「変態王子」という渾名で呼ばれるようになる。
成績は悪いが、陸上部に所属していることもあり、体力と走力はかなりのもの。
かなりの鈍感かつ行き当たりばったりな性分で、いつも女性関係で大変な目にあっている。
オスカー・ワイルドを心の師としており、自己犠牲精神がかなり強い。

ヒロインは猫系後輩、犬系同級生、鋼鉄の王な先輩、勝気な陸上部副部長、ツインテールロリ娘。
一番のお気に入りは本音を失った少女、筒隠月子。
本来は感情の起伏の激しい子供っぽい性格だが、そんな自分が嫌で、猫像に本音を引き取ってもらっている。
そのため、本編では感情が表情や語気に表れなくなり、一見すると無表情で無平坦な女の子にしか見えない。
童顔でスタイルも未発達と、性格以外も幼い部分が多く、本人はそのあたりをかなり気にしている模様。
主人公に対しては好意を抱いているが、普段は毒舌。でもこっそりデレまくっている。
料理を筆頭として家事が得意とお嫁さんスキルはかなり高い。あと、絵やマッサージも得意。

評価はC。
良くも悪くも主人公の一人称である地の文がポイントの作品だと思いました。
変態性を発揮している時は面白いのですが、鈍感力全開な時とシリアスな言い回しの時は少々イラッとすることも。
基本的に比喩や回りくどい表現が多いため、読みにくいという難点もありましたしね。
まあ、良く言えば他作品にない、オリジナリティのある文章になっていたともいえるのですが…
本筋は道中こそ明るく楽しく愉快な変態青春ラブコメの中、常に不気味な雰囲気ばかりが漂っていましたが
最終的には皆笑顔で幸福感を覚えることができる大団円を迎え、良い読後感を味合わせてくれた印象。