村人Ａと帝国第七特殊連隊　　　二村ケイト（オーバーラップ文庫）



転生者が変革をもたらし、兵士が銃で魔物を討伐する異世界を舞台にした非英雄による英雄譚。
世界の変革に転生者が関わってはいるものの、本編において主役を張るのは持たざる者たち。
特殊な「何か」を持たず、しかし己が信念のために平和を乱す怪物と戦う主人公たちの姿がとにかく熱い。
この手の話におけるお約束なチート異能や現代知識を用いた完勝や成功、安定感こそないですが
その分リアルな緊迫感がシッカリと存在しており、泥臭く掴む勝利の爽快感に溢れています。
苦難多き戦場がメインになっているがゆえに日常パートの平和さも引き立っていますしね。
ラブコメ面は今のところ進展はないですが、どうやらダブルヒロイン方式で進むっぽい？

主人公は帝国第七特殊連隊、通称「ドラゴンパピー」の小隊長として仲間と人々の為に戦う平凡な青年。
士官学校入学当初から魔力の才能が一切伸びず、歴代最弱と呼ばれていたが
知恵と勇気と劣等感を糧に飛び級を果たし、二年で卒業した実績を持つ努力家。
ややぶっきらぼうだが根がまっすぐで責任感が強く仲間想いであり、リーダーシップにも優れている。
その一方で、逆境だらけの人生をおくってきたため、称賛に飢えているところも。

ヒロインは毒舌衛生兵、ツンツン勇者。
一番のお気に入りは「勇者」と称されるほどの類稀な才を持つ小隊のメンバー、カエデ・Ｃ・ツバキ。
儚さと凛とした雰囲気を矛盾させずに内包している、黒い艶髪に怜悧な顔つきの猫族美少女。
愛嬌がなく、いつもツンツンした態度をとっているため周囲からは誤解を受けやすいが
根は口下手かつ臆病な小心者であり、そのくせ反骨心が強く負けず嫌い。
また、からかいに弱かったり、ぺたんこな胸がコンプレックスだったりと中身の怖さは皆無。

現時点（一巻）においての評価はＣ。
凡人が怪物を倒す。他の物語においては数行語られれば御の字の内容を克明に描いている作品です。
平凡で、人としての弱さをその胸に抱きながらも仲間たちと共に前に進もうとする主人公。
そんな彼と共に過ごすうちに救われ、成長し、そして異性として慕うようになっていくヒロインたち。
戦場という過酷な場所で、しかしだからこそ魂が煌めく彼らの活躍は「燃える」の一言。
本筋は主人公が仲間たちと共に凶悪な怪物を退治する、というのが基本になっていくようですが
明確なラスボスの不在、所属組織が軍隊としてシッカリしているという点からして先が読めません。
正直、一見すると話が大きく動く余地がほとんどない設定に見えますし…