シンマと世界と嫁フラグ   空埜一樹(HJ文庫)



世界を一変させうる力を突如得た主人公と、その力を求めてやってきたヒロイン達のドタバタラブコメ。
主人公が基本、泰然自若としているので設定のスケールの大きさに比べて淡々とした雰囲気があります。
肝心の力に関しても、ほとんど努力なしにあっさり使えるようになりますし、読んでてストレスを全く感じませんね。
むしろ騒々しいのが周囲ばかりなので、その辺が新鮮というかシュールな感じでしょうか。
ラストは敵対するラスボス的能力者を打ち倒し、家族に加えての大団円エンド。
ラブコメ的には決着的な話はなしのまま終了。ただ、将来的にはハーレムエンドはほぼ確定的っぽい。

主人公は神にも悪魔にもなれる力を得てしまった少年。
ただし本人にはまるでその気はなく、年齢の割に枯れ気味ともいえる平穏主義者にして現実主義者。
とはいえ、己の平穏を乱すことに対しては力を振るうことを厭わない。
将来の夢は「よくできた嫁と幸せな家庭を築く」と贅沢であり平凡なものだが、他者からは拡大解釈されている。
突如得た力と立場に対しても動じることなく、極自然に受け入れる度量と精神力を持つ。
ただし、ラッキースケベイベントや家のガラス破損など、普通の生活に起きるハプニングにはあっさり動揺したりも。
両親が亡くなってからは、男手ひとつで妹を育ててきたため、家事全般(特に料理)に長けている。
超がつくレベルのシスコン。

ヒロインは護衛剣士、へっぽこツンデレ娘、妄想聖女な幼馴染、使命に燃える妹分少女、ラスボスなボクっ娘。
三巻にて幼馴染の姉が、四巻にて毒舌メイド加わったぽいですが、サブ的扱いの模様
一番のお気に入りは、主人公の護衛に派遣されてきた少女、御守紅刃。
SPの家系に生まれ、幼い頃から訓練を受けている「疾風迅雷」の二つ名を持つ凄腕の剣士。
しかし、育ちが育ちなため、一般的な常識は皆無で、恋愛に対する興味や羞恥心といった
年頃の女の子ならば当然持っている感情もまったく身に着けていない。
が、主人公らと過ごすようになってからは、徐々に女の子らしい感情を身に着け始めている。
普段から、主人公の役に立つべく『シンマ様メモ』なるものを持ち歩き、事あるごとにメモっていたり。

評価はC。
主人公の主観が重視されていたため、背景は大きいのに、世界は小さいというアンバランスな作品でした。
私はサックリと読める作品のほうが好みなので問題はなかったですが。
あとは、主人公がブレなさすぎという点が、ハッキリ良悪を分けましたね。
困難に対してウダウダ悩まず、マイナス方面の溜めがほとんどなかったのは良かったのですが…
展開そのものは起伏が大きいのに、主人公にブレがなさすぎて起伏を感じにくかったといいますか。
挿絵ののっぺり感もあわせて、常に淡々と話が進むと言うか、メリハリが効いてない印象を受けました。
そのため、熱い&萌え展開になっても、読んでいて額面ほど盛り上がれなかった感じです。