てのひら開拓村で異世界建国記   星崎崑(MF文庫J)



異端と判断され魔物だらけの弧島に捨てられてしまった少年の異世界のんびり建国記。
主人公が邪神に呪われていたり、そのせいで異端と判断され孤島に捨てられたりと背景は結構重いですが
内容そのものはゲーム的スキルを使ってのお手軽サバイバル生活がメインと、ほのぼの路線の模様。
まあ、便利ではあってもスキルには色々制限があるので一足飛びで何もかも上手くいくとまではいきませんが
その分徐々に生活を向上させていき、自力を高めていくという堅実な建国物語が楽しめます。
なお、世界観の都合上バトル要素も一応ありますが、主人公自身の戦闘力が低いため描写量は少なめ。
ラストは主人公の能力によって世界を滅びから救い、そして再び建国がはじまるのだったエンド。
ラブコメ的には王様という立場もあって九人の嫁と結婚、子宝にも恵まれて終了。

主人公は異世界に転生するも、邪神に呪われていたため魔物だらけの弧島に捨てられてしまった少年。
箱庭内の村で自由に物を生産でき、育てたものを現実に持ってこれる「てのひら開拓村」というスキル持ち。
前世では生まれつき病弱でニ十歳まで生きられなかった上、友達もほとんどおらず、家でも病院でも
ゲーム(特に箱庭ゲームが好き)ばかりをやって過ごしていたため、現世では行動的な気質が強い。
現世で二度捨てられた経験から、困っている人や悲しんでいる人を見捨てられないところがある。

ヒロインは献身的なアンドロイド、ぽんこつ女騎士、気丈な亡国姫、天真爛漫な翼人娘、ブラコン義妹。
純粋素直な妹分、行き遅れ気味お嬢様、好奇心旺盛な神官、薄幸の生贄娘。
あと、サブにやんちゃな狐娘、箱庭の管理エルフ三姉妹など。
一番のお気に入りはモンディアル公国の宝石とまで言われた麗しき亡国の姫君、ユーリセシル。
長く美しい金髪に、亡国の姫君という言葉がよく似合う、儚げで、しかし芯のある瞳が印象的な美少女。
元王族だけあって言動に気品があり、聡明で物腰も穏やかでコミュニケーション能力も高い。
また、意外とたくましくお茶目な一面があり、色恋には結構積極的に動くタイプ。

評価はB。
孤島の中、まるでゲームのようにスキルを用いて生活環境を整えていく主人公の奮闘が見ていて楽しかったです。
こういう一から何かを作り、発展させていく箱庭ゲーム的な話は個人的には大好物。
勿論、主人公をはじめとした住人たちからすれば生活がかかっているサバイバルではあるのですが
その割に切迫感や悲壮感はほとんどなく、むしろ癒しすら感じられる雰囲気が漂っているのがよかったですね。
キャラに関しては、色々な苦難を懸命に乗り越えようと努力する主人公が活き活きとした魅力を出しており
そんな彼を助け、共に生きようと頑張るヒロインたちも健気可愛くてグッド。
本筋はシリアス成分濃い目な世界観の中、バトルなどはあれども終始ほのぼのとした雰囲気が保たれており
伏線もキッチリ全部回収されての完結と、読後感は文句なし。優しい気分になれる物語でした。
あえて残念な点を挙げるなら、ラブコメ描写が足りないところでしょうか。主人公が恋愛を後回しにしていたのと
イベント進行が早かったこともあって、過程を飛ばして結婚まで行ってしまった感が…