レーゼンシア帝国繁栄紀   七条剛(GA文庫)



知で一国を繁栄へと導いた「本物より気高き偽皇帝」の国家掌握ファンタジーストーリー。
一般市民がある日突然皇帝の代役として国家運営をすることになる、いわゆる入れ替わりものですね。
持ち前の知識と優しさ、そして皇帝としての権力と武力を十二分に用いて国の難題を次々と解決し
宮廷の臣下があっと驚くような賢帝ぶりを発揮していく主人公の姿は痛快の一言。
国家運営という内容の大仰さの割には、重苦しさや堅苦しさも薄めなので読み味も軽いですし。
ラブコメ面は主人公が皇帝(代役)なので婚約者は選びたい放題。ハーレム建設も可能ですが、さて。

主人公はひょんなことからレーゼンシア神聖帝国皇帝の役割を担うことになった青年。
上級学校の創設以来、最年少で準教官の資格を取った秀才学生として学内では有名。
小心者ではあるものの、真面目で自制心が強く、イザという時の決断力と胆力は一級品で頭の回転も速い。
苦学生ゆえに数多くのアルバイトをこなしてきた経験から、手先が器用で色々な知識を有しており
特に、マッサージに関しては老師から「指先の魔術師」という称号をもらったほどの腕前。
ただ、頭脳労働の優秀さに反し、昔から剣や馬術は苦手で、運動はからっきしだったりする。
老師の志を引き継ぎ、少しでも多くの人に学問を行き渡らせるため、故郷に学校を建てることが夢。

ヒロインは唯我独尊な皇女、完璧才女な教え子、純粋無垢な姫、ボクっ娘な公女。
あと、未登場の婚約者があと最低でも一人はいるようなので今後の増員は確定の模様。
一番のお気に入りはいつも教室の一番前で主人公の授業を聴いている熱心な生徒、シルフィ。
長く綺麗な紫色の髪に利発そうな眼差しの、どこか大人びた印象がある美少女。
物腰穏やかで理知的な性格をしており、帝国で一、二を争う大商会の一人娘らしく商才に優れているが
その一方で、主人公と一緒の時間を過ごすためには労を惜しまなかったりと、乙女として積極的な一面も。

現時点(二巻)においての評価はC。
こういった身分詐称設定は、どうしても詐称している身分が他者の評価に大きく関わってしまうため
主人公自身が評価されている感が薄れるという点が引っかかるところではあったのですが…
この作品は主人公個人の魅力や能力が前面に押し出されているので、あまり気にならないのがいいですね。
ヒロインたちも経緯や程度の差こそあれど、皇帝という身分ではなくちゃんと主人公個人を見ているので
素直に各自ごとのスタンスにおいてのラブコメ模様を楽しむことが出来ますし。
本筋は主人公が皇帝の影武者として国や婚約者たちに起こる問題を解決していく、という流れで
進んでいくようですが、前途は多難ですし、何よりこの物語の最終的な着地点はどうなるのだろうか。
やはり最後はメインヒロインの皇女に婿入りして正式な皇帝になるのかな?