オール・ジョブ・ザ・ワールド   百瀬祐一郎(富士見ファンタジア文庫)



世界初の転職ができない最底辺の職業である「遊び人」となってしまった少年の、依頼解決物語。
ギルドが会社に、冒険者が社員に置き換えられているだけで、大枠ではよくあるファンタジーもので
持ち込まれる依頼(クエスト)を解決し、報酬を稼ぐという構図がメインになっている話ですね。
転職を繰り返すことで強くなる世界が舞台ということで、とにか主人公の不遇っぷりが目立ちます。
いや本当、ここまで本人に一切の非がないのに不幸な主人公はそうはいないのではなかろうか。
ラブコメ面はフラグが立っているヒロインこそいるものの、主人公が自分の立場上気乗りしないようで…?

主人公は良い会社へ就職するため、職業訓練学校で懸命に努力をして今期最高のステータス値を
得たにも関わらず、まさかの最底辺職業である「遊び人」になってしまった悲劇の少年。
無意識に女の子を口説いてしまう「女殺し(ジゴロ)」というスキル持ち。
頭に血が上りやすく、現金でややひねた性格をしており、浅慮でおっちょこちょい。
しかし、約束のためにたゆまぬ努力を積み重ね、決して諦めない意思の強さの持ち主でもある。
お金に翻弄され続け、妹と引き離されてしまった過去を持つがゆえに、自分たちみたいに金の為に
人生を狂わされる者たちを全部救うべく、世界一の金持ちになることが目標。

ヒロインは王女な魔術剣士、実利系巨乳裁判官、腹黒アイドル。
一番のお気に入りは職業訓練学校二位のステータス値を持つ社長令嬢、ティア・ラブ・ヒューイット。
すっと整った鼻すじ、流麗な川を思わせる様な髪質、眠そうな垂れ目のアクアマリン色の大きな瞳。
そして、山脈を思わせる大きな胸(90のG)を有する、黙っていれば文句のつけようがない才色兼備の美少女。
感情の起伏が少なく、口調も淡々としており、常にマイペースで何を考えているか読めないため
友達はいないが、本人はまったく気にしていない。恋愛についても人生の贅肉と言い切っており
どれだけ優秀な子孫を残せるかを重要視しているため、スペックの高い主人公との結婚を望んでいる。

現時点(二巻)においての評価はC。
とにかく主人公を応援したくなる作品。目標のために努力を重ねた結果が職業「遊び人」と莫大な借金。
それでも折れずにもがきながらも前に進もうとする姿は凄いの一言。私なら自暴自棄になりますよ…
まあ、だからこそ「実は遊び人にはとんでもないスキルがあった」展開には燃えるものがありましたが。
一方、そんな彼を取り巻くヒロインたちは逆玉な身分が枷になっている点が気になるところ。
本筋は借金併催と妹との約束のために奮闘する主人公、という方向性で進んでいくようですが
失踪中の闇に堕ちた王子の思惑や、暗躍する組織の存在などもありますし、前途は多難?