バーサス・フェアリーテイル   八街歩(富士見ファンタジア文庫)



定められた悲劇の物語を改変し、少女を、世界を救い出すボーイミーツガールファンタジーストーリー。
語り継がれし伝承・伝説の世界から突如現れ、人類世界の破壊派と共生派に分かれた異世界人たちが
現代兵器を凌駕する「物語」の力をもって人知れず戦争をはじめた世界が舞台になっています。
分類としては学園バトルファンタジーですね。異世界人は童話に基づいた能力を用いるというのが面白い。
異世界人は物語が基盤になっているがゆえに悲劇の運命を背負っており、それを救うのが主人公の使命。
という設定もわかりやすいですし、お色気&ラブコメイベントが挟まれることによる緩急もバッチリ。
ラブコメ面は今のところ進展なし。フラグが成立しているヒロインは複数いるようですが…

主人公は幼い頃失った妹を求め、人工島にそびえる轟岳館学園に入学した少年。
顔は整っているほうだが、斜に構えたような性格が表情に滲み出ているせいか、外見を褒められることは少ない。
妹(成長予想図)をイラスト化したTシャツを制服の下に着込んでいたりと、結構オタクなところがあり
飾らない、自分に正直な性格も相まってアニメや漫画への一途な情熱を全く隠そうとしないタイプ。
また、面倒見がよく、困っている人や危機に陥っている人を放っておけない気質の持ち主でもある。
伝説レベルの古流武術である刃無流古道術を修めているため近接戦闘力はかなり高い。

ヒロインは食いしん坊剣士、ギャル級友、悲劇マニアな委員長。
昇格候補に腹黒な理事長や神出鬼没な寝ぼけ娘なども。
一番のお気に入りは気さくなクラスメートにしてその正体が「マッチ売りの少女」なギャル、篝火灯萌。
ウェーブがかった明るい髪をツインテールにし、メイとトアクセサリを綺麗に決めた顔立ちの美少女。
外見に加え、率直で馴れ馴れしくノリの軽い言動から、いかにもギャルっぽい印象が強いが
人に隠れて努力をしていたり、色恋には純情であったりと、中身は結構真面目だったりする。

現時点(二巻)においての評価はC。
パッと見はありきたりな学園異能バトルものっぽいですが、敵にやられたらその人間は存在した痕跡全てが
この世から消滅する。すなわち、人類(異世界人は別)は被害者を被害者として認識できないとか
何気にえぐいにもほどがある設定である。この作品、後味の良いハッピーエンドで終わるのは無理なのでは…
キャラに関しては、普段は我が道を行くオタクとして馬鹿をやりながらも、妹を探し出し助け出すという
目的を絶対とし、絶望的な戦いにも怯まない主人公が実に応援したくなる魅力に溢れています。
ヒロインたちも普通からかけ離れた部分のある娘ばかりですが、デレの威力は申し分なしでグッド。
本筋は凶悪な敵のボス格十二名の内二人を撃破するも、残り全員が攻めてきて全面戦争に。
……というところで一区切りとのこと。あとがきを読む限り売り上げ次第で続刊は出る様ですが
このパターンで実際に続きが出た作品は見たことがないから打ち切りなんだろうなぁ…