魔王討伐したあと、目立ちたくないのでギルドマスターになった
                                               朱月十話(富士見ファンタジア文庫)



魔王をメイドに従え、ギルドマスターとなった元英雄のギルド依頼解決ファンタジーストーリー。
人類を脅かしていた魔王が倒され、平和になったファンタジー世界を舞台にした依頼解決ものですね。
主人公のギルドは一般的なギルドでは手に負えない依頼を解決する特殊なギルドということになっているので
依頼人は訳アリ&持ち込まれる依頼は難事件ばかりなわけですが、それだけに持ち前の頭脳と実力で
あらゆる依頼を解決していく主人公の活躍が頼もしく、爽快感と後味の良さを作り出しています。
なお、奉仕(エロい意味含む)好き魔王が相方ということもあって、お色気シーンもそれなりにあったり。
ラストは世界を滅ぼさんとする異空の神を封印し、世界を救った英雄となった忘却の五人目は、相変わらず
場末のギルドで決して目立ち過ぎないようにマスターを続けるのだったエンド。
ラブコメ的には判明している限り九人のヒロインと結ばれ、子宝にも恵まれているハーレムエンドで終了。
なお、他にも怪しいヒロインは何人かいるため最終的には更に嫁が増えた可能性も。

主人公はSSSランクの規格外の力で魔王を討伐した奇跡の五人の中のひとりにして、魔王討伐後は
「銀の水瓶亭」のギルドマスターとして、持ち込まれた依頼を自分が目立たないように解決している青年。
何でも器用にこなす能力から魔王討伐隊では影のリーダーを務め、結果として「忘却」の二つ名を得た。
子供の頃、人並外れた実力を発揮して魔獣を撃退した結果、周囲から孤立してしまった経験から
目立つことを嫌っており、良く言えば慎重で思慮深いが、悪く言えば守りに入っている考え方が常。
異性に対しても機転の利いた気遣いができるが、肝心の自身に向けられる好意には鈍感なところも。
いつも他人に興味がないようなそっけない態度をとっているが、実際は誰よりも周りの人のことを考えている。

ヒロインは奉仕メイド魔王、ツンデレ魔法使い、天真爛漫な武闘家、鎮魂好き僧侶、男装の剣士、ヤンデレ師匠。
上品聡明な王女、純真懸命な槍騎士、淑やかなレイスクィーン、純朴な虎人娘、賭け好きな前マスター。
忠誠心高き月兎族、頑張り屋な青狐族、引っ込み思案&潔癖な双子、盲目の刀使い、生真面目な魔王女なども。
また、八巻で平行世界の自分も落とした模様(最終巻で再登場した)
一番のお気に入りは「沈黙の鎮魂者」の二つ名を持つ魔王討伐隊の最年少、ユフィール・マナフローゼ。
魔王討伐後は褒美として身寄りのない子供を受け入れるための孤児院をもらい、そこの院長に就任。
アルベイン神教会の大司教である父の跡を継ぐために司祭を兼ねつつ多忙な日々を過ごしている。
奉仕精神に溢れる努力家で、苦労を苦にしない、成人すらしていない年齢にそぐわぬできた人格者だが
鎮魂に対してだけは強い執着があり、特に主人公の魂を鎮めて気持ち良くなりたがっている。
一見すると浮世離れした聖女のように見えるが、本当は結構ちゃっかりしたところも。

評価はB。
目立ちたくないがゆえに自分の活躍だということを隠して依頼を解決しているというのに
結果として依頼人やその関係者たちに慕われ好かれてしまう主人公が羨ましいやら不憫なのやら。
ヒロインは元英雄やお姫様などと有名人ばかりなので、誰と結ばれても目立つことになりますしねw
まあ、それだけの魅力を彼は持っているのだから仕方がないといえば仕方がないのですが。
反面、主人公とその仲間たちの実力が圧倒的すぎて全くハラハラドキドキしないのは難点かも?
本筋は魔王討伐後からのスタートということで、序盤はともかくそれ以降は毎度国家、あるいは世界レベルの
事件が起こり、敵の強さもインフレを起こしていたものの、それらを更に上回って勝利をつかみ取っていく
最強主人公と仲間たちの活躍が実に痛快で読んでいて気持ちよかったです。
最終決戦からエピローグまでの流れや演出も申し分なかったですし、恋愛面にちゃんと決着をつけた点もグッド。
欲を言うなら、短編で収まるような軽い感じの事件や詳しい過去編なんかも読みたかった…