フリーライフ   気がつけば毛玉(角川スニーカー文庫)



レベルMAXぐーたら店主とおしおきメイドさんのほっこり異世界ライフストーリー。
大枠としては異世界転移ものになるわけですが、物語開始時点で既に転移から三年の月日が過ぎている上
魔王退治や伝説のアイテム探しといった果たすべき使命もないので大冒険をすることもありません。
主人公は何でも屋を運営しているためお仕事ものの要素こそありますが、基本的にはスローライフ重視。
悪党やモンスターが出てくる世界観なので一応バトル描写こそあるものの、主人公はチート級の実力者なため
シリアスな展開になることもほとんどないですしね。不安を抱くことなく、安心して読み進めることができます。
ラストは全ての元凶である悪神を撃破し、何でも屋の青年は騒がしい異世界生活へと帰還するのだったエンド。
ラブコメ的には決定的な進展こそなかったものの、メインヒロインのユミエルの正妻ポジは揺るがずで終了。

主人公は異世界暮らし三年目の転移者にして何でも屋「フリーライフ」のぐーたら店主。
その正体は神すら倒せる世界最強クラスの実力を誇る斥候職にしてパニッシャー。
一時期は冒険を楽しんだり、元の世界に帰ろうと頑張っていたのだが、気力が尽きてしまった結果
まるで覇気のない、ぐーたらで面倒くさがりな極度の駄目人間になってしまった。
しかしその一方で、困っている人を見て見ぬふりができず、また、調子に乗りやすく迂闊な性分から
望まぬ厄介事に巻き込まれたり飛び込んだりする羽目になり、苦労することもしばしば。
やらない時はする気も起きないが、やるとなれば徹底的に行うタイプ。

ヒロインは無表情メイド、明朗快活な看板娘、人懐っこい犬獣人、思い込みが激しいお嬢様、男勝りな冒険者。
マッドな黒髪エルフ、尊大な混沌龍、ふんわり聖女、不憫な隣国王女。
一番のお気に入りは近所の大衆食堂「まんぷく亭」の看板娘、カオル=ロックヤード。
東洋人の血を引いているからか、黒髪黒瞳と結構日本人っぽい顔つきをしている美少女。
明るく元気で朗らかと親しみやすい性格をしており、主人公とは頻繁に付き合いがある気安い仲。
実は本人も知らなかったが、東の小国のお姫様(失踪した当主の孫に当たる)だったりする。

評価はC。
普段は自堕落でやる気がないけど、周囲の人たちの危機や悪党相手には本気を出すやれやれ系主人公が
クールなメイド少女に尻に敷かれ、尻を叩かれながら働く姿は実に日常的なほのぼの感があって良い感じ。
彼を取り巻くヒロインたちもそれぞれ個性的で華やかさと賑やかさも申し分なかったですしね。
本筋は最終巻終盤を筆頭に、時折シリアスな展開が挟まれることこそあったものの
全体的にはコミカルでほのぼのとした空気が崩れることのないまま完結と、読後感は上々でした。
話の軸である「主人公が大人になる」を前提にした目線で見ても上手く纏まっていましたし。
まあ、いくつか消化不良な部分もありますが、そっちはWEB版で補完されているのでそちらで。