美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!
                                                春日部タケル(角川スニーカー文庫)



百万部に挑むラノベ編集者な主人公と天才JK作家の熱血ラブコメストーリー。
大枠としてはライトノベル作家と編集者を題材にしたお仕事ものですね。業界話も結構取り扱われています。
ただ、基本的にキャラ同士の掛け合いのテンションが高い上にパロディネタも多めとコメディ要素が濃いため
読み味は軽いですし、シリアスパートも青春熱血色が強いためサクサク読むことができます。
作者さんの「勢い任せすぎて当たり外れが激しいギャグ」も健在ではありますが、ここは好みの範疇ということで。
ラストは会心の一作を書き上げ、しかし編集者としての道を主人公は迷いなく歩んでいくのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの天花が少しだけ踏み込むも、結局進展はないまま終了。

主人公は文芸編集者になるはずが、何故かラノベ編集部に配属されてしまった新人編集者。
ミリオンセラーを担当し、編集界でのし上がるという野望を持っている。
努力家にして自信家で、物事をハッキリ言うタイプだが、それゆえに作中ではツッコミ役が定位置。
中学生の時、四十万部を超える作品を作り出したラノベ作家だったのだが、悪質な編集者の横暴で意に沿わぬ
続編を書かされた結果、その内容が大きな非難を浴び、作家生命を絶たれたという過去を持っており
その経験から、売れない作品を書く作家や作者に合っていない作品を書かせる編集はクソだと考えている。
特技は高一の時に習得した速読、苦手なものは高いところ。

ヒロインは天才JK作家、兼業OL作家、腹黒イラストレーター、ドSな天才小学生。
一番のお気に入りは主人公の小説に感銘を受けて作家を志した新人賞出身の十八歳兼業OL作家、雄鶏ひよこ。
PNはオードリー・プッルス・ガッリーナーケウスで、デビュー作、二シリーズ目ともに打ち切られている。
驚くほどに白い肌、モデルのようにメリハリのついた体形、どこか他者を拒絶するような冷たい光の宿る瞳。
透き通るような澄み切った、それでいて冷徹なものを感じられる声色と、一見すると無表情クール系の美人だが
たまに時代劇風口調になったり、ぶっとんだ発想を繰り出したりと中身はかなりの不思議ちゃん。
ただ、根は真面目で努力家な性格であり、いい子。なお、美人なのに褒められ慣れていないためチョロい。

評価はC。
ラノベ作家ものというと大体作者は独立独歩であり、私生活やリアル経験などを周囲の協力で補ってもらう。
みたいなスタイルが多いですが、この作品は主人公が編集者であるため、二人三脚な空気がよく出ていました。
まあ、打ち合わせ内容はボケツッコミがメインなのですが、決めるべき場面ではしっかり決まっていましたしね。
キャラに関しては、ツッコミ役を事実上一身に務めながらも、熱意全開な主人公が存在感抜群でしたし
変人だけれどその分個性バッチリで、女の子としての可愛らしさも兼ね備えているヒロインたちもグッド。
本筋は主人公が過去を乗り越え、作家としてではなく改めて編集者として前に進んでいく、と形としては文句なく
綺麗なオチになってはいたものの、ラブコメ面を筆頭にそれ以外の部分で消化不良感が強すぎて
ここで完結となってしまうのが実に残念。作品の内容が内容だけに、ある意味皮肉が利き過ぎ…