女神の勇者を倒すゲスな方法 笹木さくま(ファミ通文庫)
いきなり剣と魔法の世界に召喚され、魔王の参謀となった少年の勇者攻略譚。
ゲームにおいてはお約束、リアルに存在すると攻め込まれる魔王側からすれば理不尽すぎる
「倒しても何度でも復活する勇者」の心を如何にして折るかという点に主眼を置いている話ですね。
相手が死なない以上、精神を攻めるのは定石ですが、確かに主人公の戦法はゲスいw
とはいえ、あくどくはあっても外道な手段はとりませんし、魔王側も元々侵略する意思はないので
シリアス成分は薄く、ゆるい雰囲気が濃いため肩の力を抜いて読むことが出来ます。
ラストは全ての元凶たる女神を倒し、その後魔族と人間の友好を軌道に乗せてハッピーエンド。
ラブコメ的にはヒロイン三人に告白し、受け入れられて終了。
主人公は電車に乗っていたはずが、気がついたら異世界の魔王の目の前にいた高校二年生の少年。
特に目立つところはないが、何事にも動じない度胸だけは子供の頃から人並み外れている。
ボケもツッコミもこなせるが、冷静で飄々とした態度を取っていることが多い。
また、分析力や観察眼に優れ、所持している知識や情報をもとにした応用にも長けているが
その一方で、良識や常識に囚われず、卑劣な策略の限りを尽くして敵を倒すことに喜びを感じる
ゲスな精神と、博愛精神なんて欠片もない利己的な考え方の持ち主。
しかしそれゆえに、大義や正義のためでなく、個人的な理由でなら全力で動けるタイプでもある。
ヒロインは心優しき魔王の娘、毒舌家なダークエルフメイド、快活な僕っ娘勇者。
一番のお気に入りは魔王に次ぐ魔力の持ち主にして側近のメイド、セレスター。
褐色の肌に銀色の髪、長く伸びた耳など、ダークエルフの特徴を備えた美女(更に巨乳でもある)
感情表現が少なく、涼しい無表情で平坦な物言いをするのが常なクールビューティーだが
下ネタ含みの毒舌が多い上、頭脳派に見えて魔族の例に漏れず脳筋の戦闘民族思考をしている。
その一方で、普段のS全開な言動に反し、口説かれると照れてしまったりと意外に初心なところも。
また、主人公の餌付けのせいか、食に関することとなるとポンコツ化することもしばしばだったり。
幼少期における壮絶なトラウマが原因で、ゴキブリを筆頭にした虫全般が苦手。
評価はC。
何の異能も持たず、しかし頭ひとつで迫り来る勇者を撃退していく主人公の活躍が実に痛快でした。
作中では人死が普通に出ますが、蘇生前提なので後味の悪さもなかったですしね。
ヒロインたちも皆根が良い娘ばかりなので、掛け合いにおける清涼剤的な可愛らしさが抜群でしたし
勇者側には必ず同情の余地のない悪人が登場するので勝利時の爽快感も抜群だったかと。
魔王の人間界進出の目的が「可愛い娘のために美味しい食べ物を手に入れる」であるため
合間合間で軽く飯テロ要素(凝ったものは出てこない)があるのも良いアクセントになっていましたし。
本筋はラスボスを倒した後の混乱のフォローまでキッチリ描いての完結と、綺麗に纏まっている印象。
主人公の帰還問題や恋愛面の決着など、細かい部分までちゃんと消化されているのもグッド。