俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する 藍月要(ファミ通文庫)
のちに魔法技術の礎を築きあげ「賢人」と称された、異世界の英雄たちの物語。
大枠としては異世界転移ものですが、主人公たちの異世界に対するアプローチが斬新で面白い。
重力、摩擦、大気構成。そして魔法にマジックアイテム。これらの異世界ものにおける一般常識を
「異世界だし」とふわっと受け止めるのではなく、なんでそうなるんだと一から考察し確認していく。
ある意味当然のことであり、しかし他の作品の主人公たちでは色々な都合でできなかったことを
知識と技術者的好奇心のある高専生であるがゆえに躊躇なくやっていく姿が実に新鮮で楽しいです。
ラストは人知れず異世界の危機を救い、そして彼らは再会を誓って元の世界へと帰還するのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの三峯魅依と結ばれて終了。なお、未来では結婚して子供もいる模様。
主人公は大山工業高等専門学校の機械科三年生にして、ロボット研究会所属の少年。
思考の切り替えが早く、物事を分けて考えられ、対人関係に物怖じしないタイプ。
口が回る高いコミュ力と明るい性格から、ロボット研究会ではムードメーカー的存在になっている。
一方で、クセの強い人間を好み、喜んでひっつく習性のあるなど、悪食系人付き合い主義者なところも。
一番可愛がっているのは妹の咲で、一番崇拝しているのは声優のまゆらんこと樽喜まゆら。
ヒロインは天才プログラマー、没落貴族の冒険者。レギュラーサブに中学生の妹なども。
一番のお気に入りは大山高専情報科所属の四年生にして名の通った凄腕プログラマー、三峯魅依。
細い身体に似合わないくらいの豊満な胸を有し、少し癖のある黒の前髪の下に切れ長の瞳を押し込めながら
鼻筋の通ったかんばせを俯かせているのがデフォルトな目隠れ系美人。
気弱で奥手で内気な性格をしており、会話相手がなれた人間であってすら俯き加減、言葉も常に詰まりがち
と、人とのコミュニケーションが抜群に不得手。ただ、状況によっては案外頑固な一面も。
筋金入りの低血圧に加え、集中して作業し続けると鼻血を出してしまう体質持ち。本気で怒らせるとヤバイ。
評価はB。
試して調べて開発する。そんな理系&技術者魂全開炸裂な話を異世界でやろうという話ですね。
考察や説明の描写がかなり多いですが、基本的にわかりすく書かれているのであまり苦労せずに読めました。
まあ、専門用語や小難しいネタもそれなりに出てくるので、そこは読み飛ばすのが吉でしょうが…
お約束とも言える、異世界の困難に現代知識を結集して挑む展開は爽快感に優れていましたね。
キャラに関しては、頭はいいけど人としては凄く馬鹿な面々の振り切れた生き様がとにかく見ていて楽しい。
ただ、話の方向性的に人手が必要とはいえ、転移した人数が十二人というのは多すぎだった気がしますが。
本筋は最初から最後まで「高専生」という自分たちらしさを忘れずにファンタジー世界を駆け抜けていった
主人公たちの活躍が実に痛快でした。個人的には各自のアフターを読んでみたかったです。