異世界ですが魔物栽培しています。 雪月花(ファミ通文庫)
植物はすべて魔物な異世界に転移した少年の、世界を揺るがす波乱の異世界栽培ファンタジーストーリー。
魔物を倒し捕まえる、あるいは召喚して仲間にするのではなく、栽培して増やし活用する。
しかも、戦わせるよりも食用として扱うことがメインになっているというのが珍しいですね。
基本的には農業系スローライフ&ファミリーストーリー色が濃く、ほのぼのとした話が大半を占めますが
最終目標が世界の滅亡阻止なだけに、話が進んでいくほどバトル&シリアス要素が濃くなっていきます。
ラストは長き旅路の果てに世界の滅亡を食い止めることに成功。そして主人公は二つの世界を行き来しつつ
今日も仲間たちと共に人と魔物が共存する世界を実現させるべく魔物栽培に精を出すのだったエンド。
ラブコメ的には主人公を巡る恋の戦いはこれからだ! な感じの未決着状態で終了。
主人公は「萌え植物図鑑」一冊だけを握り締め、異世界に転移してしまった大学生。
転移先の世界では人類史上で初めて種から野菜=植物型魔物の栽培に成功した。
リアクションが激しく、喜怒哀楽が顕著、考えていることが顔に出やすいなど、内心がわかりやすい性格で
行動力は抜群だが、向こう見ずで物事を深く考えずに動いてしまうところがある。
また、根っからのお人よしであり、自分の得よりも相手のことを優先しがちな一面も。
ヒロインは勝気な冒険者、魔王の娘、純朴な看板娘、積極的な貴族娘、コミュ障魔女、心優しき王女、男装勇者。
サブに健気なマンドラゴラをはじめとした女性型魔物たちや料理好きな勇者なども。
一番のお気に入りは故郷を勇者に追われ、雪山の奥地でひっそり暮らしている魔女、イース。
真っ白なローブと帽子で全身を包み、白い前髪で片目を隠している美少女。
家族以外の人間と話したことがないため、引っ込み思案、口下手、ぼそぼそ口調と人と話すことが苦手。
それゆえに、主人公たちと出会うまでは幼い頃から一緒だったドリアードだけが唯一の友達だった。
評価はB。
世界観がかなりふわっとしているというか、ツッコミどころが多いですが気にしたら負け。
懐いてくる魔物たちによって形成されている魔物ハーレムな主人公一家が実に楽しそうでよかったです。
戦闘力皆無にも関わらず、魔物だからと偏見の目を持たず、優しく接する主人公は好感が持てましたし
そんな彼と親しくなっていくヒロインたちも各々の立ち位置で上手く魅力を発揮していた印象。
本筋は全ての伏線と因縁をキッチリ回収しきっての完結と、文句なしの読後感でした。
ラストバトルについても、戦う力のない主人公が旅の中で結んできた人や魔物との絆が勝因に!
という形になっていて、それが実にこの作品らしい満足感と爽快感を生み出していましたしね。