ヴァンパイア/ロード 葛西伸哉(HJ文庫)
吸血鬼たちの争いの中心、王として敵対勢力の殲滅を決意した少年のバトルアクションストーリー。
吸血鬼は過去から生き続ける生物兵器、という発想が面白い。確かに自然発生にしては弱点多すぎるもんな…
内容のほうは復讐が主人公の大きな原動力になっているということで、暗い雰囲気が濃い目ですが
その分、話に芯が通っていて無駄な甘さがないのでイライラを覚えず読み進めることができます。
主人公に直接戦闘力がないがゆえに、駆け引きなどの頭脳面が目立っているのも読み応えがあって良い感じ。
ラストは敵対勢力の首領を倒し抗争における勝利を確定付けるも、残党の後始末をはじめとした
終焉を告げる最後の王としての戦いの旅路は続いていくのだったエンド。
ラブコメ的にはヒロインたちが主人公のいないところで好意を表明するも、具体的な進展はないまま終了。
主人公は吸血鬼を支配できる「王の血」を持つ高校生男子。
高校生離れした胆力、落ち着き、判断力、注意深さ、聡明さ、そして努力を厭わない精神性を有しており
険のある雰囲気こそあるものの、やや華奢で整った容姿に加え、ずっと成績トップというステータスから
女子からの人気は結構あるのだが、当の本人は個人的な感情の機微に疎いため気づいていない。
また、物事を理詰めに考え、そのまま表に出してしまう傾向があるため、人付き合いを苦手としている。
やるなら徹底的にやるタイプで、それは生死を賭けた闘争でも例外はない。
ヒロインは忠誠心厚き吸血鬼、引きこもり義妹、優等生な社長令嬢。
一番のお気に入りはイジメを受けて不登校になっていた料理好きな中学三年生の義妹、神槌美紘。
少し癖のある長い髪をさっとまとめた、明るく元気な印象のある美少女。
何事にも優秀な主人公のことを心から尊敬し、慕っているが、それゆえに自分のふがいなさに悩んでいた。
そのため、吸血鬼化して主人公の「特別」になったことに歓喜し、強い執着心を抱いている。
評価はC。
賢く冷徹で割り切りがよく、そして芯がブレない。正に王の器といった感じの主人公に圧倒されました。
本編開始までは平穏な生活をおくっていたのに、切り替えの早さが不自然に見えませんでしたし。
万人に好感をもたれるタイプではありませんが、主人公としての存在感は間違いなく抜群だったかと。
また、そんな彼を支えるヒロインたちも、各自の立ち位置をしっかりと確立しているのがよかったですね。
本筋は一連の事態の決着までの展開が綺麗に纏められており、消化不良感を覚えることはなかったのですが
やはり二巻完結であるがゆえに最終決戦のアッサリさをはじめとして、駆け足感が否めなかった印象。
あとがきを読む限り、第三勢力やヴァンパイアハンターなど、世界観を広げる構想はあったようですし…