最底辺からニューゲーム!   藤木わしろ(HJ文庫)



望んで奴隷転生した青年が異世界で奴隷美少女たちと始める痛快ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転生ものなわけですが、主人公がチートを得ず素のままで望んで奴隷からスタート
という構図は中々に新鮮。まあ、チートなしでも元から才覚がある上、最底辺(奴隷)期間はすぐに終わるので
タイトル詐欺とまでは言わずとも、下積み期間における試行錯誤を期待していたら少々拍子抜けするかも?
まあ、その分主人公の素チートを活用した怒涛の成り上がりっぷりを楽しめるわけですが。
ラブコメ面は今のところ進展なし。好感度高めのヒロインは何人かいるようですが…

主人公は自分の実力を一から試すために望んで奴隷に転生した元日本人の青年。
常に飄々と傲慢で不遜な態度を取り、何が起ころうとも揺るがずに他者の上に立ち続けているが
観察、分析、記憶力に優れ、頭の回転が速く、口も上手い、度胸も抜群と態度に相応しいスペックの持ち主。
人を売り買いし、本来なら多方から恨まれるべき奴隷商人という存在でありながら、買い手と奴隷の両方から
感謝されていることから、周囲からは「お人よしの奴隷商人」と呼ばれているが
無駄は可能な限り排除する効率主義者で、敵対者には欠片も容赦がないタイプでもある。

ヒロインはツンデレ黒髪エルフ、無邪気な狼人、心優しき商会首領、苦労人な憲兵隊隊長、幼女大司教。
一番のお気に入りは奴隷を扱う商会「鈴蘭」の首領を年若くして継いだ少女、ミルト・ファミリエ。
煌びやかな白金の髪に碧玉に似た大きな瞳を持つ、幼い面影を残した美少女。
お人好しで気が弱く、内心が表に出やすい。また、泣き虫ですぐ謝りがちと頼りない性格だが
父の意思を継ぎ、苦しい生活を送る人々を理解し、同じ目線で物事を見て、下層を変えていきたいという
理想を健気に抱き続けられる、純粋な優しさと芯の強さを併せ持っている。

現時点(四巻)においての評価はC。
生まれ育った環境が恵まれ過ぎていたため、自分の本当の実力を知る機会を得られなかったから
チートなしの身一つのまま過酷な世界で実力試し! という主人公の動機はぶっちゃけ女神の言う通り
お坊ちゃんの道楽以外の何物でもないのですが、ちゃんと実力も伴っていたからとんでもないことに。
頭脳優秀過ぎというか、これに恵まれた環境まで加わっていた生前の彼の人生はどれだけ凄かったのだろうか。
ただ、完璧すぎるがゆえの人間味の薄さにヒロインたちが苦労しているのはご愁傷さまですが。
本筋は世界を滅ぼし、新たに作り直さんとする男の暴走を食い止め、国内のゴタゴタは一段落。
次巻からは他国とのゲーム模様が描かれていくと思われますが、あとがきを読む限り続きが出るか不安だ…