魔術破りのリベンジ・マギア 子子子子子子子(HJ文庫)
様々な魔術体系を東洋魔術でブッ飛ばす、ハイエンド魔術バトルファンタジーストーリー。
科学技術の発展の裏で確固たる魔術文明も築き上げられている二十世紀初頭の世界が舞台になっています。
大枠でいえば学園異能バトルものになりますが、魔術体系の多様性や考察がかなりきちんと練りこんであり
そのため、メインとなる魔術バトルが単純な出力比べにならず、読み応えのあるものに仕上がっている印象。
まあ、女の園に男一人、でも女装状態だから客観的には百合風味という状況設定は微妙に落ち着きませんがw
ラストは復讐者から逆襲者へと転じ、全ての黒幕を打ち破った少年の青春はこれからも続いていくエンド。
ラブコメ的にはヒロイン側の好意こそ明白ではあるものの、これといった進展がないまま終了。
主人公の家は側室OKなので将来的にハーレムエンドもありそうではありますが、家の柵とか凄い面倒そう…
主人公はセイレム魔女学園に留学生として訪れることになった凄腕の陰陽師な少年。
膨大な術式と有する豊富な知識を駆使して相手の魔術を看破しそれを攻略する「魔術破り」に長ける。
傲岸不遜にして皮肉屋、他人を信用しない利己的な性格で、高圧的な物言いが常なため敵を作りやすいが
その苛烈さは血の滲むような努力で得た実力と、権力闘争を勝ち抜いて得た地位によって裏付けされている。
しかしその一方で、いくら冷酷無比に徹しようとしても、最後の最後で甘さを捨てきれない一面も。
小柄な体躯に背中まで伸ばされた艶やかな黒髪、スラリと細い足、白くきめ細かい肌、中性的に整った顔立ち。
と、女装をすれば完璧な和風美少女にしか見えない外見スペックの持ち主。
ヒロインは純粋無垢な世話係、誇り高き令嬢、忠愛深き式神、ずぼらな年上幼馴染、ツンデレな昔馴染み。
一番のお気に入りは欧州において絶大な影響力を有する魔術の名家の令嬢、フランセス・フィッツロイ。
毛先がロールを描いているツインテール状に括られたプラチナブロンドの髪に、瑠璃を連想させるような碧眼。
そして、端正な顔立ちと均整の取れたプロポーションと、まるでフランス人形を思わせるような美少女。
プライドが高く、負けん気と責任感の強い性格だが、自分の非を認めれば素直に謝罪できるなど根は善良。
その一方で、実家とは関係のないただのフランセスとして見てもらいたがっているところがあり
それゆえに、自分を実力で捻じ伏せ、真摯に叱ってくれた主人公に深い好意の念を抱いている。
評価はC。
ミステリー要素や魔術バトルを軸にしつつも、それに伴って主要キャラの成長がシッカリ描かれていたり
全てが収束するクライマックスの盛り上がりも抜群と、ひとつの作品としての完成度の高さには感心の一言でした。
キャラに関しても、冷静沈着な尊大さと胸の内に秘めた熱さを併せ持つ主人公が格好よかったですし
まっすぐな性根で主人公に接するヒロインたちも重い空気を掻き消す清涼剤として申し分なかったです。
本筋は「主人公の成長物語」としては過不足ない円満な結びを迎えたと評価してよい出来だったと思いますが
倒すべき敵組織の首領と幹部は未だ健在、ポジションの割に掘り下げが不十分なキャラも何人か残っていたりと
消化不良な部分があるのが少々引っかかるところ。ラブコメ面も最終巻ではほぼ言及なしでしたし…