もう異世界に来ないでください。 伊藤ヒロ(MF文庫J)
知恵と勇気とハッタリであらゆる異世界勇者を追い返す、ドタバタファンタジーストーリー。
この世界はもう俺が救って富と権力を手に入れたし、女騎士や女魔王と城で楽しく暮らしてるから
俺以外の勇者は―――という文が本来ならタイトル前に付いているのですが、長すぎるので省略。
大枠としては、異世界転移&転生というジャンルをメタ視点で描いている話と言ってよいでしょう。
しかし、後続勇者たちの中に居酒屋とか自衛隊とかどこかで見たようなのが混じっているのには吹きますねw
ここまであからさまに既存有名作品のパロディをぶち込まれると逆に清々しくて面白い。
ラブコメ面はヒロイン側の好感度はMAX、ハーレムを作れる権力と立場を持ち、主人公にもその気あり。
と、環境的には申し分ないものの、肝心の主人公が鈍感でヘタレなため今のところ進展は見えず。
主人公は死闘の末、魔王を倒して異世界を救った英雄となり、地位と権力、優雅な生活を手に入れた少年。
よく他人から言及されるヒネた目つきに加え、口が上手く、嘘と卑怯を嗜みとしていることからわかるように
セコくて小ずるくて身勝手でムッツリスケベという、典型的なクズ人間的性格をしているが
他人を信用していないがゆえに責任感が強く、難しいことや危険なことは絶対に自分でやるタイプであり
また、無用な人死や差別を自分の命をかけても許せないとする優しさの持ち主でもある。
ヒロインは女子高生勇者、単純素直な女騎士、マイペースな魔王。
一番のお気に入りはかつて世界の半分を手中に収めた黒の魔王、メルルヴィア。
さらさら輝く銀の髪に吸い込まれそうなルビーの瞳、不自然なほどに真っ白の肌。
そして、エルフ的な尖った耳を持つ、一見すると十四、五歳くらいに見える(実際の年齢は不明)美少女。
常に眠たげでテンションが低く、マイペースな性格。表情も乏しく喋りもぽつぽつと小声で抑揚がないが
自分のために苦労する主人公を見てゾクゾクしたり、透明化して覗きを働いたりと、中身は結構変態。
魔族と人類の最終決戦の日、命がけで自分を殺さなかった主人公の覚悟に恋をした。
現時点(一巻)においての評価はC。
異世界転生&転移もののお約束をこれでもかと弄りまくり、笑えるギャグに仕上げている手腕は流石の一言。
また、転生者による異世界への影響についてシッカリ言及されている点も中々新鮮さがありますね。
キャラに関しては、本人は無力でありながらも小狡さ全開で困難を解決していく主人公が実に頼もしいです。
私欲に塗れているようで、何だかんだで全てを救おうとする嫌味のないツンデレ的優しさもありますし…
そりゃヒロインたちもチョロインになっちゃいますよね。これは仕方がない、うん。
本筋は今後も一巻同様襲来する後続勇者たちを追い返していくという流れで進むと思われますが
これ、根本的な原因が神様にある以上、事実上キリがないという点はどうするのだろうか?