無気力勇者と知りたがり魔王 冬木冬樹(MF文庫J)
魔王城で織り成される、無気力勇者と平和主義の魔王(とその部下達)のラブ&ピースストーリー。
でも外は絶賛戦争中。平和なのは魔王城の中だけ。
……と、割とそれでいいのかお前ら感が拭えない世界観だったりします。
魔王を筆頭に、ヒロインたちの大半は精神的にも見た目的にもやや幼いため、ラブコメ要素は薄め。
というか、主人公の立場は保父さんに近い感じですね。
でもヒロイン側は割と真剣なので、その辺のすれ違いというか認識の違いが面白さの一つかと。
ラストは色々あるけど、それでも魔王城は平和ですエンド。伏線投げっぱなしの打ち切りです。
恋愛要素的にはほぼ進展がないままの終了です。話としては綺麗にまとまってはいましたが。
主人公は元無職な勇者の孫。
無気力かつ面倒くさがり屋。熱くなることはほとんどなく、やたら言い訳がましく楽したがりでヘタレ。
束縛されることを嫌い、戦うこと、というか疲れることを拒絶している毎日。
口を開けば「めんどくせぇ」ばかりで、正義感や人情などはほとんど持ち合わせていない。
客観的に見れば、悪い意味での自己中であり、普通に人間のクズである。
が、そこは勇者の祖父という血筋を持っているためか、やる気にさえなれば戦闘力はかなり高い。
ただし余程の事がなければ戦うより逃げることを選択するタイプだったりする。
一通りの家事はできるものの、前述の通り面倒くさがりなので料理などはいつも手抜きのものばかり。
勇者の孫ということで色眼鏡で見られてきたという過去を考慮しても、ここまでダメな主人公は稀かもしれない。
ヒロインは純粋無垢な魔王、生真面目な人狼、腹黒竜人、脳筋王女。
物語上のメインヒロインは魔王一択ではあるものの、恋愛要素を加味したヒロインは実質的にいなかったりする。
一番のお気に入りは世界が平和ではないために降臨した魔王、アイアリス・エウブーレウス・タルタロス。
魔王であるにも関わらず、平和主義で純粋無垢で人を疑うことを知らない。
しかしその力は脅威の一言であり、実際に世界征服に動き出したらマジでヤバイ存在。
口調こそ魔王らしく厳かではあるものの、普段は幼い見た目通りの子供っぽい性格。
何故か、感情によって髪がうねうねと一定の法則で動く。
評価はE。
設定は面白いと思うのですが、主人公の最低さがかなりのマイナス点。
どれだけヒロインの言動が可愛くても、主人公が喋るたびに不愉快にならざるを得ないのが痛い。
真剣になる場面もあるものの、最初からそうしろよとしか思えないし。最後まで好きになれませんでした。
世界観も、外の世界がドロドロ過ぎて、いつシリアス展開が来るのかと落ちつかなかったですし。
キャラの掛け合いも、要所要所で勇者と魔王という存在を強調しすぎてて、どうも設定語り感が強かった。
シリアス要素がないときの、ほのぼのとした一幕は良い感じだったんですけどね。