底辺剣士は神獣と暮らす   番棚葵(MF文庫J)



少年剣士が神獣な娘達とギルドな家族で過ごすのんびり迷宮都市ライフストーリー。
生存能力は高いけれど実力自体は大したことがない主人公がチートな三人の義娘達の助けを借りて
迷宮で荒稼ぎをし、目標額達成を目指しつつ生計を立てていくというのが大筋の話ですね。
ホームドラマコメディな要素が濃い目になっていますが、全体に漂うほのぼのした雰囲気とは裏腹に
結構バトル描写の比重が大きいです。まあ、味方戦力が強すぎて緊迫感はあまりないのですが…
ラストは無限の未来へと向かって歩き出す娘たちを少年は優しく見守るのだったエンド。
ラブコメ的には進展皆無で終了。客観的には幼馴染のリウナと夫婦同然の関係に見えますが。

主人公は自身に宿る「悪運」の祝福により碌な冒険が出来ずにいた迷宮都市で暮らす少年剣士。
ある日、罠にかかり飛ばされた先で三人の少女を拾い、刷り込みによって父親認定されてしまう羽目に。
ダンジョンに入る度に凶悪な罠にかかり、モンスターに襲われていたため生存能力に特化している。
親しい者に対しては心配性で面倒見が良く、筋の通らないことを嫌うまっすぐな性格をしており
「弱いものを守るのは、力持つものの義務」という義侠心の強い持論持ち。
色恋方面では十七歳にしては多少初心なところがあり、積極的に異性と交遊しようとはしない。

ヒロインは天然系幼馴染、元気娘な長女、クーデレな次女、しっかり者な三女。
一番のお気に入りは持ち前の幸運だけで勇者にまで上り詰めた幼馴染、リウナ=ソウルシェア。
黄金に輝く髪に大きくつぶらな瞳、そして、歩く度に震える豊かな胸が目を惹く美少女。
「強運の戦乙女」と呼ばれるほどの実力者だが、当人はちょっと天然でのんびりとした性格をしており
頭の出来があまりよくないせいで魔法が使えなかったり、優柔不断で部屋の片付けができなかったり
気は優しいが、優しすぎるがゆえに自分が知らないものを知っていると豪語してしまい
それを手に入れる依頼を引き受けてしまったりと、肩書きに反してポンコツな部分が結構多い。
ただし、身に宿した強運と料理の腕前だけは間違いなく一級品。

評価はC。
家族団らんとダンジョン攻略を両立するという破天荒な設定が中々に良い味を出していました。
娘達のチートと主人公の生存能力が合わさったスピーディーな冒険模様も見ていて爽快でしたし。
まあ、個人的にはもう少し普通の日常生活描写を増やして欲しいところではありましたが…
キャラに関しては、家族のために悪運の苦労にもめげず新米パパとして頑張る主人公が好感度大。
そんな彼を傍で健気に支える幼馴染やお父さん大好きな三人娘たちも皆良い娘でしたしね。
本筋は毎巻大きな事件こそ起きる者の、過度にシリアスになることなく、優しい雰囲気を崩さないまま
ほのぼのほっこりできる読後感に浸らせてくれる安定した構成になっていたかと。
欲を言えばもう少しラブコメ要素を濃くしてほしかったですが、まあこれはテーマ的に仕方ないですな。