ぼくらはみんなアブノーマル   佐々山プラス(電撃文庫)



バグってしまった世界を舞台に、バグ持ちの少年が欠陥美少女たちとおくる青春ラブコメストーリー。
大枠としてはお悩み解決が活動のメインになっているタイプの特殊部活動(委員会)ものです。
そこに不条理にして非現実的な「バグ」というハンデ設定が加わることで、独特の味が出ている印象。
やっていることそのものは基本的に王道の学園ラブコメなので読みやすさもバッチリですしね。
あと、お色気系統の描写が特殊なシチュエーションばかりなのも個性的で目を惹かれますね。
ラブコメ面は一巻終盤で主人公がメインヒロインの袖森今に愛の告白(のようなもの)を行うも
それは恋愛感情を伴うものではなかったいうオチがついたため、ヒロインレースは振り出しに。

主人公は「考え事をするとフリーズする」バグを持つ少年。
医者を目指し努力していたが、致命的なバグ持ちゆえにその夢は断たれ、更には退学の危機に陥る羽目に。
テストを受ければ赤点必至で成績は下の下の下だが、脳筋野郎として方向転換した後は
特待生として私立学園に入学できるほど剣道に打ち込んでいたため、体つきと運動能力はかなり高い。
自分のことだけに精一杯なことから、達観した孤独主義者な面が強く、言動もぶっきらぼうで
歯に衣着せないところがある上、興奮すると本能が暴走してしまったりもするが、根は善人。
ちなみに性癖は巨乳フェチであり、好きなカップ数はJカップ。

ヒロインは人懐っこい先輩、高飛車お嬢様、ツンデレ同級生。
一番のお気に入りは「生物に触れられず、透過してしまう」バグを持つ隣席のクラスメイト、日出宮美月。
いささか整いすぎた顔立ちとモデルのようなスタイル、金持ちらしいオーラで威圧感を振りまく美少女で
祖父が政治家、父親が市長、叔父が警察署長という資産家一族のお嬢様でもある。
ですわ口調に尊大で高飛車な言動、我侭で頑固な性格と、絵に描いたようなお嬢様キャラをしているが
根は臆病で、更には友達が少ないことを気にしていたりと結構メンタルが弱い。

現時点(一巻)においての評価はC。
考えることが出来ないからこそ今というその場その場に全力で突き進んでいく主人公が存在感抜群。
バグのデメリットが深刻すぎて「凄い」だけで済ませられないのがキツイところですが…
そもそも、バグの治療が事実上無理とされているからなぁ。根本的な部分で救いがないわけですし。
だからこそ、彼ならではのストレートな行動と言葉でアブノーマルたちを救っていく姿が痛快なのですが。
一人ではつらいことも、誰かと寄り添うことができれば変わってくる。という結論も綺麗ですしね。
本筋は一巻で綺麗に物語が纏まっている感はありますが、依頼解決型の構成となっている以上
続編を出すのは容易なはずですし、また彼らの奮闘と活躍を見てみたいところ。