このたび、勇者はモン娘をアイドルへ導くことになりました   哀歌(電撃文庫)



魔王が倒され、しかし混乱の続く世界を舞台にした可愛いモン娘×二周目勇者の冒険ファンタジーストーリー。
人間と魔族の本当の種族融和のために、モンスター娘をたち世界に希望を与えるアイドルにする。
という一見ぶっ飛んでいるようで、しかし成功すれば確かに効果が大きそうな発想が実に愉快。
変に現実的だったりシリアスな路線に行くよりも、ずっと好感が持てる前向きさが良い感じですね。
まあ、種族対立や同種族間での差別などのファンタジーならではのシリアス要素も存在していますが…
魔王亡き後とはいえ、平和とは言いがたい世界観なのでバトル描写も用意されていますし。
ラブコメ面は今のところメインヒロインのユリナだけが恋心を自覚しているという状況ですが、さて。

主人公は種族融和を目指し、モンスター娘スカウトのため東奔西走することになった魔王を倒した伝説の勇者。
考えることがあまり得意ではなく、思い立ったら一直線なフォロー必須の猪突猛進型の性格をしており
それゆえに腹の探りあいが苦手で失言が多いため、一見頼りなく見られてしまうが
正義感は誰よりも強く、困った人を救わずにはいられない根っからの勇者気質の持ち主。
魔王討伐の冒険時代は精神的な未熟さから無茶を繰り返し、危機に陥ってばかりだったことから
師のように思っている賢者リーベルのように強くなりたい、一人前と認められたいと常に考えている。

ヒロインは清純派セイレーン、高飛車ドリアード、天然系ゴーレム、恥ずかしがり屋な魔王の娘、現料理人な賢者。
一番のお気に入りは自分の唄に自信が持てない半人前のセイレーンの少女、ユリナ。
海の蒼を思わせる背中まで伸びた長い髪に、同じ色をした丸い瞳を持つポセイドンとセイレーンの混血種の美少女。
物腰穏やかにして健気で素直な性格をしており、清純さと博愛に満ちた心の持ち主だが
ずっとセイレーンの羽を持つことが出来ずにいたがゆえに、自分に自信がなく、精神的に弱い面がある。

現時点(一巻)においての評価はC。
綿密な計画性も合理的な現実性もなく、ただ勢い任せで考えただけの思い付き。
しかしそれでも、それが未来の平和に繋がると信じて愚直に奮闘する主人公の姿が中々に熱いです。
肝心のアイドルたるモンスター娘なヒロインたちも皆個性的な華やかさを持っており、見栄えは抜群ですし。
本筋はとりあえず一巻がメンバー集め、初ライブと地盤固めの段階だったので、次巻以降の発展に期待。
魔王軍残党の存在など不安要素もありますが、個人的にはあまりシリアス方面には傾かないで欲しいところ。
あと、ヒロイン候補になると思われる魔王の娘ヴィオラの今後の扱いも気になります。
部下に裏切られて刺されて力を利用されて攫われて、これでこのままフェードアウトだったら不憫すぎる…