ライジン×ライジン   初美陽一(富士見ファンタジア文庫)



ストレンジャーと呼ばれる異能力者に認定された少年少女たちが繰り広げる異能バトコメストーリー。
異能バトルというシリアス不可避なジャンルでありながら、ノリの軽さを重視している珍しいタイプの作品です。
基本、登場人物たちが良くも悪くも馬鹿ばかりなのでシリアスが長く続きません。
すぐにギャグになったりサクッと事件が解決されたりと重い展開や欝展開はほぼ皆無です、特に序盤は。
なのでストレスをためずに読むことが出来るのがいいですね。
ラストはかつての憧れであったラスボスを撃破し、世界の危機を救っての大団円ハッピーエンド。
ラブコメ的には主人公が「俺はヒロイン皆のヒーローだぜ!(意訳)」宣言をするも、そこに恋愛的な意味はなく
ヒロインたちを惚れさせるだけ惚れさせて本人は鈍感なまま好意に自覚なく終了。

主人公は念願のストレンジャーに覚醒した十五歳の少年。
幼少期から常人離れした妄想力を保持している、いわゆる中二病患者。端的に言えば痛い子。
が、現実や格の差、力の恐怖を思い知ってもなお、そのキャラを崩そうとはしない拘りはある意味凄い。
調子に乗りやすく子供っぽい、その上単純であるため実に操作しやすい性格。また、超ツッコミ気質。
何気に頭の回転は早く、洞察力に優れていたりするが、普段のキャラがキャラのため台無しになる事が多い。
保持能力は全身のどこからでも白いゲルを放出&操作できるというもの。ぶっちゃけビジュアル的には最悪の能力。
恋愛感情についてが超がつくほどの鈍感であり、結局最後までヒロインたちの好意に気づかなかった模様。

ヒロインはツンデレ雷娘、中二病炎少女、虫使いお嬢様、巨乳室長、ぐーたら氷結能力者、影薄クラスメイト。
無表情系銀髪少女、褐色肌犬系娘、電脳系ボクっ娘。更には最終巻では二足歩行ロボットも陥落、パネェ!
一番のお気に入りは主人公に負けず劣らずの中二病患者にして発火能力者な焔熾夜侘。
現役の中学二年生であるため、中二病を患っているのはある意味おかしくはない。
初登場時、怪我もしてないのに格好つけのために包帯を巻いて登場したりと、痛い子レベルはかなりのもの。
基本的に弱気な性格であるため、相手に強く出られると素が出てしまう。きっと将来黒歴史を後悔するタイプ。

評価はB。
異色の異能バトル、軽快なボケツッコミなど、良い意味でバカ丸出しの空気が楽しいことこの上ない作品でした。
勢いがありすぎて所々ギャグが滑っている部分こそあるものの、個人的には大好きです、こういう話。
主人公のゲル能力を筆頭に、変化球ばかりが目を引いた印象ですが、ストーリー自体は直球の王道でしたしね。
まあ、話が進むにつれ、段々シリアス要素が濃くなっていったことが少々の不安要素ではありましたが
主人公チームは最後までブレずまっすぐなままでしたし、最終巻のクライマックスではキッチリと
メインテーマ「ヒーローとは?」とタイトル「ライジン×ライジン」も回収され、見事な着地を見せてくれました。
最初こそイロモノ臭漂いまくりなギャグラノベ、というだけの印象でしたが、終わってみればそのイロモノ臭こそが
この作品の命にして看板なのだと納得せざるをえないほどの個性を放っていたと思います。