豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい   合田拍子(富士見ファンタジア文庫)



大人気アニメの世界の中の嫌われ者悪役に転生してしまった少年の、運命を変える物語。
悪役で、デブで、嫌われ者で、最終的にはずっと想いを寄せていた人を奪われて実家から追放される。
原作知識ありの異世界に、公爵家の三男(才能抜群)として転生という好条件を揃えながらも
それ以上のマイナス要素を背負ってのスタートになってしまった主人公の奮闘がメインの話です。
最悪の未来を覆すために努力し、成り上がっていくというカタルシス満載の構成がいいですね。
ラストは自由と最愛の人を得た少年は、未来を切り開くために帝国へ、エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのシャーロットと結ばれて終了。

主人公は大人気アニメ「シューヤ・マリオネット」の世界のデニング公爵家三男こと、豚公爵にして
クルッシュ魔法学園の大問題児スロウ・デニングに転生してしまった少年。
転生してもベースが公爵家の人間だということもあってか、基本的に上から目線の態度が多いが
下の立場の者を無意味に蔑んだりはせず、むしろ面倒見のよいところを見せることも。
また、目的のためならば家の威光を使うことにも躊躇いはないが、その一方で周囲からどんなに酷い言葉を
かけられようとも、心折れずに努力を続けることができるなど、根性は一級品。
気を抜くと時折本物の豚みたいな「ぶひ」という声を出してしまう癖がある。

ヒロインは亡国姫な従者、裏表のある後輩、元婚約者な第二王女。昇格候補に引きこもり姫なども。
一番のお気に入りは原作アニメ視聴者の一部から「エロ本魔王」として人気な平民の後輩、ティナ。
あどけない童顔に後ろで纏められた艶やかな長い黒髪、そして起伏に富んだスタイルが特徴的な美少女。
人前では猫を被っており、真面目でおしとやかな女の子を装っているが、素は魔法を使いたいがために
幼い頃から入学資金を貯め、勉学に励み、クルッシュ魔法学園に見事合格した超のつく頑張り屋であり
負けん気というか、強いハングリー精神の持ち主。同時に、とんでもないムッツリスケベでもある。
人の本質や、ここまで言えば怒るだろうとか、微妙な境界線を見抜く術に長けている。

評価はC。
悲劇的な結末を回避するために、そしてたった一人の大事な少女ために生まれ変わろうと奮闘する主人公の姿は
原作バッドエンドの裏設定も相まってとにかく応援したくなる魅力に溢れています。
原作知識に加え、スペックそのものは元々高いのだから、是非、この主人公には幸せになってもらいたい。
メインヒロインのシャーロットをはじめとしたヒロインズもそれぞれの可愛らしさが抜群に映えていますし。
本筋については「え、十巻も続いておいてこれで終わるの?」としか言いようがないのが正直なところ。
一応主人公の当初の目的自体は事実上達成して終わっていますし、物語としては一区切りもついていますが
世界観や伏線を考えると不完全燃焼極まりないわけで。ラブコメ面もシャーロット以外のヒロインの扱いが…
いやまあ続き自体はWEBのほうで読める様なんですけども、やはり本という形でそれを楽しみたかった…