通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?
井中だちま(富士見ファンタジア文庫)
MMORPG世界に転送された少年の、新感覚母親同伴冒険コメディストーリー。
大枠としては異世界転移とMMORPGの複合ものですが、なんと言ってもその特徴は母親同伴であること!
ラノベにおいて親が有名人であったり、実はとんでもない実力者であったりというのはよく見かけますが
普通の主婦だった母親がいきなりチートになり、しかも冒険の旅についてくるというのは斬新過ぎである。
ただまあ、母親の存在感が強すぎて他の主要キャラが完全に喰われている感がありますが…
ラストは親子対決を経て、ゲームクリア。そして少年は母親同伴で新たな冒険を開始するのだったエンド。
ラブコメ的には進展がないまま終了。ヒロイン側のフラグはちゃんと立っていたようですが…
主人公は母親同伴でゲーム世界に転送されてしまった少年。
気分の浮き沈みが激しく、短絡的でおだてに弱い性格をしており、加えてやや厨二病の気がある。
その一方で、なんだかんだで悲しんでいる人を見捨てられない、お人よしで面倒見の良いところも。
母親に対しては、嫌いというわけではないが、苦手意識があって素直になれないお年頃。
ヒロインは息子を溺愛する実母、残念系ツンデレ賢者、癒し系旅商人、闇心持ちヒーラー、甘えん坊魔神。
一番のお気に入りはサポート能力に特化している十二歳の旅商人、ポータ。
つぶらな瞳でじっと見つめてくる、幼い純粋さで溢れている顔つきがほわっと柔らか可愛い小柄な美少女。
一人称は「自分」で、トレードマークはぷっくり膨らんだ大きなショルダーバッグ。
素直で健気で純粋で心優しく、気遣いが出来て何事にも一生懸命なパーティ内の心の癒し役だが
失敗をすることにやたらと過敏になってしまうところがある。
評価はC。
これでもかとばかりに主人公の母親が物語の前面に出しゃばりまくる毎度の流れがとにかくインパクト抜群。
……ではあるのですが、やはり「メインヒロインが実の母親」という前提がある以上は色物感がぬぐえない印象も。
姉や妹ならアリなんですが、母親という冠がつくとどうしてもヒロインとしては認識できないわけで。
正直、お色気シーンとか主人公に感情移入して読むがゆえに喜びよりもげんなり感のほうが強かったですし。
親子の絆がテーマであると考えれば構成は間違ってはいないし、話そのものは十分面白かったのですが
どうしても割を食っているというか、譲歩してるのは子供のほうばかりに見えるのが難点だったかと。
本筋は最初から最後までブレずに描かれていた母と子供の物語がゲームクリアと共に幕を下ろし
そして再び幕は上がり…と言うところで終わるという綺麗な締めで、正に大団円といった感じで読後感は上々。
明らかに出オチな題材を二桁巻も連載し続け、シッカリ描き切った作者さんはとにかく凄いの一言。