終末ノ再生者   河端ジュン一(富士見ファンタジア文庫)



滅びた世界を生きる少年少女が輝かしい今を勝ち取るまでの物語。
大枠としては転生からのボーイミーツガールもの。行き先は異世界ではなく荒れ果てたはるか未来ですが。
魔術と錬金術を駆使し、災厄を振りまく「天使」と戦うという学園異能バトル路線の話になっています。
世界規模の災厄が起こって一度大人が絶滅している、と世界観がディストピア染みているところもありますが
悲観的なだけではなく、希望を持たせてくれる要素もしっかりあるので読み味は悪くないかと。
ラブコメ面はダブルヒロイン構成での三角関係がメインになるっぽい?

主人公は鉄骨の下敷きになりかけた少女を救い、代わりに自分が死んでしまうも
その後、はるか未来の世界で最強のホムンクルスに召喚された人格として転生を果たした少年。
物語の主人公に憧れ、自分が誰かにとっての主人公になりたいという考えが身に染み付いており
人並み以上の勇敢さと正義感を併せ持っているが、過去に妹を失ったことが原因で自己犠牲精神が強く
それゆえに他人が傷つくことを良しとせず、反して自分のことは軽視するところがある。
無類の甘党で、特技はゲーム全般(手先が器用なため)

ヒロインはツンデレ奇才娘、実直な学年主席。他にも参戦しそうな娘がチラホラと。
一番のお気に入りは錬魔学園の評価テストオールAランクの実力者魔術使い、青峰アリス。
薄紫の瞳に端正な目鼻立ちの顔、透き通りそうなほどの白い肌、そして銀色のショートカットが印象的な
正に神秘的という言葉がしっくりくる美少女で、つけられた異名は「叡智の結晶(ベスト・ワン)」
ストイックでまっすぐな性格、感情に乏しい表情、淡々とした口調、協調性のなさ、機械的なクールさ。
それに加え、人間離れした実力が相まって周囲からは畏怖され、敬遠されている。
しかしその実、理不尽な暴力によって両親を失った自分と同じ境遇の人間を二度と作らないことを
行動原理とし、他者に尽くすことを厭わないなど性根はどこまでも優しい。
また、幼い頃から血の滲むような魔術の英才教育を詰め込まれる生活をおくってきたがゆえに
女の子としての常識と羞恥心が皆無で、一般的な娯楽にも耐性がなかったりする。

現時点(二巻)においての評価はC。
転生して得た力で世界を、そして大切な人を守るために戦う! という王道を行く主人公の設定がいいですね。
人格も信念にまっすぐでブレがないので見ていて気持ちよく、素直に応援したくなる魅力がありますし
ヒロインたちも自分の生き方に一生懸命なところが庇護欲をそそる可愛らしさになっている印象。
とにもかくにも、全編を通して若さゆえの情熱が前面に押し出されているのが燃える要素になっています。
本筋は人類存亡の危機の中、内では魔術サイドと錬金術サイドの対立、外では敵対する謎の組織の暗躍。
と、まだまだ問題だらけではありますが、だからこそ主人公には状況に風穴を開ける活躍を期待したいところ。