月とうさぎのフォークロア。   徒埜けんしん(GA文庫)



神そのものではないが人間でもない「神人」と人間が共存する異世界を舞台にした任侠バトルストーリー。
挿絵の可愛さとタイトルから漂うメルヘンっぽさから、ほのぼのとしたラブコメがメインになるかと思いきや
組織同士の抗争有り、ガチの殺し合いあり、味方の裏切りや肉親の死有りと、任侠要素がかなり強いです。
一応主人公やヒロインたちは良識的な任侠ポジションではありますが、それでも敵は容赦なく殺しますし。
なので、異能や神人といったファンタジーな要素こそくっついてはいるものの、内容は結構殺伐気味。
ラブコメ面がメインヒロインにして幼馴染の稲羽白が正妻確定といっていい優位なポジションにいるも
愛人希望のヒロインもいたりと、ハーレムエンドの可能性はそれなりに高そう?

主人公は神衆三大組織のひとつ、月夜見一家総長の一人息子にして高校二年生の少年で
父親が敵組織の騙まし討ちで殺された後はその跡を継いで当代総長を襲名した。
普段は情に厚く、温厚で物腰穏やか、そしていささか優柔不断と頼りなさが目立つところがあるが
聡明さと戦闘力は一級品。また、イザという時の敵に対する容赦のない冷酷さは味方をも恐れさせるほど。

ヒロインは幼馴染な兎神人、ツンデレな猫神人、元気印な犬神人、優等生な級友、純真な従妹、勝気な仇の娘。
一番のお気に入りはクラスで一、二を争う美少女と名高い隣席のクラスメイト、柏木陽菜。
体つきは華奢で胸の膨らみはささやかだが、器量よし性格よしのお嬢様であるため、周囲からの人気は高い。
主人公に好意を抱いており、それなりにわかりやすいアプローチを繰り返しているのだが
人間であることと、他ヒロインの妨害に押されがちなことから、成果はまったく上がっていない。

現時点(三巻)においての評価はC。
昨今珍しいくらいの表紙詐欺作品ですね。まさかこの絵柄で中身が血で血を争うバトルがメインとは…
勿論、学校での日常や、ヒロインたちとのラブコメなどの癒しパートも用意されてはいるのですが
あまりにも血生臭く神人が死にまくるので、そっちのインパクトばかりに気をとられてしまう罠。
キャラに関しては、極道の世界では甘い部分はあれど、守るべき者のためにはガチな主人公が正に漢。
戦いの場では恐ろしいヒロインたちも、日常では主人公ラブな態度が全開で可愛らしいですしね。
本筋は父親の仇を討ち、敵対組織の侵略を撃退、シマの拡大も達成するもまだまだ戦力的には弱小。
とはいえ、総長である主人公は覇道型ではないですし、大学にも進学して今後の話の展開が気になるところ。