フィクション・ブレイカーズ   西島ふみかる(GA文庫)



エンタテイメント作品にのめり込んだ結果、昏睡状態になる奇病「エンタメ汚染症」が蔓延した近未来を舞台にした
患者の妄想世界へと精神ダイブし、その幻想を壊して現実世界に引き戻す「意識潜入治療」を施す
潜入官の少年と監視官の少女コンビによる、妄想世界バトルアクションストーリー。
世界観だけ見るとシリアスな雰囲気が強そうに見えますが、戦場がエンタメ的妄想世界ということで
結構コミカルなシーンも多かったりします。勿論、ガチなバトル描写もしっかり用意されてはいますが。
しかしこの世界、エンタメ関係が規制されまくってるから日々の楽しみが少なくて滅茶苦茶キツそうである。
ラブコメ面は今のところ進展なし。設定的に考えるとメインヒロイン獅子堂世莉の一強と思われますが…

主人公は異様に高い「エンタメ汚染症」耐性が認められ、念願の潜入官となった少年。
自分以外の家族がエンタメ汚染症に感染してしまったため、治療方法を見つけるために奮闘。
直情的で正義感が強く、真面目で誠実な性格をしているが、それゆえに患者を助けたいという思いが強すぎて
冷静さを失い、セオリー&ルール無視の独断専行を働いてしまうこともしばしば。
エンタメに対する理解度が低いせいか、妄想世界の細かい粗を見つけてはよくツッコミを入れている。

ヒロインはエリート監視官少女。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(二巻)においての評価はC。
主人公の仕事は警察と医療とファンタジーをごちゃ混ぜにしたような感じ、としか言いようがないわけですが
この独特のカオス満載な設定がこれまでにない切り口になり、目新しさを生み出している印象ですね。
それでいて、話の展開そのものは凸凹コンビが力を合わせて難事件に挑む! という形になっているので
各事件でのクライマックスでは王道の熱さが、決着後は一件落着の爽快感が楽しめます。
ただ、主人公は仕事に私情を挟み過ぎ、世莉は上から目線過ぎと、主役コンビの未熟さが目立つのが難点ですが。
世界観がしっかりしているだけに、彼らの無茶が結果オーライで許されていることに違和感があるんですよねぇ。
本筋は不幸の大元が病気だからどう落とすのかと思いきや、どうやら裏で手を引く黒幕がいるようで…?