絶対にラブコメしてはいけない24時   長岡マキ子(講談社ラノベ文庫)



現実世界の同級生たちを使った恋愛シミュレーションゲームをクリアせよ! な学園ラブコメ。
いわゆるゲームの中に取り込まれる系の話です。題材が典型的な恋愛シミュレーションということで
ドタバタラブコメ路線かなと思いきや、制限時間内にクリアしなければ脳死状態になるという
デスゲーム要素があることが独特の緊迫感を演出し、読者を引き込む魅力を作り出していると思います。
攻略過程自体はセーブ&ロードを繰り返しながら選択肢を選んでいく、オーソドックスなものなんですけどね。
ラストはゲームを無事にクリアし、主人公やヒロインたちは元の日常へ帰るのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの佐倉凛音と結ばれて終了。

主人公は謎のVRギャルゲーに閉じ込められ、ヒロインたちを次々に攻略する羽目になってしまった少年。
漫画やゲーム、アニメは好きだが、特にハマっている作品があるかと聞かれると黙ってしまう
間違ってもリア充ではないが、どっぷりオタクというわけでもない中途半端な普通の高校二年生。
人と関わることが苦手で、友達も男女問わずほとんどいない。
良く言えば思考の切り替えが早く、悪く言えば心に棚を作り、目の前の欲望に流されてしまうタイプ。

ヒロインは真面目な風紀委員、お嬢様育ちな先輩、ドSな保険教師、ヤンデレバスケ少女、コミュ障な同級生。
一番のお気に入りはゲーム内では主人公の義妹として登場する少女、佐倉凛音。
サラサラのボブヘア、ぱっちりとした愛らしい目、華奢な身体のクラス一の美少女で
現実世界では風紀委員を務めており、役職のイメージ通り真面目で責任感の強い性格をしている。
主人公に対しては兄にどこか似ているということで興味を持ち、段々一人の男性として好意を抱くように。

評価はC。
一巻で五人のヒロインを攻略、という構成になっているので一人一人にかける描写量は少ないですが
その分ヒロインたちはサクサクとデレてくれるのでストレスフリーで読み進めることが出来ましたね。
キャラに関しても、ヒロインたちは少ないページ数の中で十二分に魅力を発揮していましたし
正答はわかっているのに、欲望に従い明らかなハズレ選択肢を選んでしまう主人公にも実に共感できました。
本筋は一巻完結ゆえに展開がかなり駆け足だった上、地に足が着いていない点も多々ありましたが
起承転結や伏線の消化がキチンとできていたため、サックリ読める作品に仕上がっていた印象。
設定やオチを見るに、一巻完結のようですが、個人的にはその後のエピソードも読んでみたいところ。
メインヒロインであるにも関わらず、掘り下げが一番足りなかった感がある佐倉凛音や
主人公を虎視眈々と狙うであろう他ヒロインたちの現実世界での動向も気になりますし…