さすがです勇者さま!   あさのハジメ(講談社ラノベ文庫)



ただ平和に暮らしたい勇者と魔王が贈る異世界学園コメディストーリー。
異世界に召喚+人間離れした勇者としての力を手に入れる、とスタートは実にテンプレ風味ですが
肝心の異世界は召喚時点で既に平和になっているため、戦うべき敵も悪の陰謀も世界の危機も存在しません。
なので、主に描かれているのは超絶的パワーを持て余した主人公が巻き起こすコメディ系トラブルだったり。
というか主人公チート過ぎぃ!? 意図せぬちょっとした動きが大事になってしまうとか…
いや、くしゃみで女の子の服を破ったりするのは読者サービス的に花丸ではあるのですけども。
ラストは過去改変の末に勇者と魔王が世界を救ってハッピーエンド。
ラブコメ的には大きな進展がないまま決着つかずで終了。

主人公は勇者として異世界に召喚され、学園に通うことになった元普通の高校生の少年。
異世界に来た際、身体に浮かび上がった聖痕のせいで、ドラゴン以上のパワーと耐久力を得ている。
元の世界では、転校を繰り返し何度も友達との別れを経験したことから「人付き合いなんてくだらない」と
考えるようなシニカルな性格になり、不登校状態が続いていた。
が、異世界に来たことを切欠に「平凡な学園生活をおくりたい」をモットーに、自分を変えようと奮闘中。
しかし、学園生徒の大半は勇者というフィルターを通して接してくるため、成果はほとんど上がっていなかったり。

ヒロインはボクっ娘魔王、自称天才美少女魔術師、伝説の傭兵な担任教師、擬人化幼女聖剣。
一番のお気に入りは「疾風のワイルドマン」の二つ名で呼ばれた伝説の傭兵、エヴァ・ワイルドマン。
可愛らしいショートカットヘア+凛々しい顔立ちの美少女で、小柄な割に胸が大きいロリ巨乳。
知識も技術もすべて一度見ただけで理解して体得することができる天才的な頭脳の持ち主なのだが
それゆえに常人の数倍のカロリー摂取が必要で、やたらとハラペコになってしまうという欠点がある。
無表情、無感情、無愛想の三拍子を揃え、口を開いても感情がこもっていない淡々とした口調が常だが
子供の頃から勇者に憧れを抱いていたり、意外にかなりの負けず嫌いであったりと年齢(十五歳)相応な一面も。

評価はC。
チョロイン気味なヒロインたちの可愛らしさを前面に押し出しているタイプの作品。
いい話はあれど、シリアス要素はほとんどないので、騒がしくものんびりとしたスクールライフが楽しめました。
キャラに関しては、主人公は尖ったところこそないものの、不快感を覚えるような性格ではなく
周囲を固めるヒロインたちも全員初期段階から好感度高めと全体的にストレスフリーなのが良かったです。
本筋は最終巻で唐突に時間跳躍イベントが発生するなど、打ち切り臭の強い展開になってはいましたが
元々ストーリーはあってないようなものでしたし、話そのものは綺麗に纏まっていた印象。
まあ、色々と投げっぱなしのままになっている部分もあるので、不完全燃焼感があるのも確かなのですが。