誉められて神軍   竹井10日(講談社ラノベ文庫)



一夜にしてファンタジー世界へと姿を変えた日本を舞台にした、新境地ファンタジー戦記。
作竹井10日さんらしい、シュールでテンポの良いボケツッコミ会話と緩い空気感のある文章は健在ながらも
今回はゴブリン、オーク、エルフ、魔人が我が物顔で跋扈する時代での戦記ものということで
生死をかけた戦場でのバトル描写やシリアスな展開もそれなりに用意されています。
とはいえ、主人公の能力が「誉めて伸ばす能力」ということもあり、重さや暗さはそれほど感じません。
ラストは元の世界へ帰るため、俺たちの戦いはこれからだエンド。
ラブコメ的にはこれといった進展はないまま終了。

主人公は「誉めて伸ばす能力」を駆使して勝利を目指す新宿市国軍の軍人。
公私共に言動が大人びており、真面目でマイペースな落ち着きがあり、自制心が強く、理知的。
自分に無頓着で俗な欲望が薄く、悪徳を好まないなど、しっかり者な軍人というイメージが強いが
実は朝に極端に弱いがために日常生活を一人ではまともに営むことができない。
また、女心にやたらと鈍感だったり、世情に疎かったりと、結構天然な部分も多かったりする。
歓楽方面にあまり興味がなく、精々活字の本を読むくらいが趣味といえないほどの嗜み。

ヒロインは幼馴染な副官、実直剛毅な下士官、ロシア人ハーフな義姉、堅物な巫女さん、母性全開な魔法使い。
平身低頭系奴隷娘、マイペースな古エルフ、陽気なトレジャーハンター、ゆるふわ系残虐魔人。
貢ぎ系ケットシー、戦闘狂皇帝、ボクっ娘竜騎士。
一番のお気に入りは指揮能力抜群な戦車部隊を率いる腹心の部下、白鶴千歳。
黒髪ロングストレートの、大人びた中にも少女性を秘めた凛々しい顔立ちの美少女。
普段は軍人然とした堅苦しい言動で引き締め役をこなしつつ、主人公に忠実な態度を見せているが
部屋のインテリアはふりふりピンクで、私服も可愛らしかったりと意外に女子力が高く
また、その内面の乙女度もヒロイン屈指だったりする(実際、軍に入るまでは可憐な少女だったらしい)

評価はC。
とにかく主人公の能力設定が秀逸ででしたね。ブースト系ですが対象を問わないので応用が利きますし
割となんでもありな効力と、その奇跡ともいえる結果を様々な反応で受け止める周囲も面白かったです。
何より、ヒロインたちへの口説き文句も兼用しているのでラブコメ要素が薄れないのがグッド。
まあ、当の主人公本人は堅物で鈍感でしたが、自覚してたらただの外道なので問題なし。
本筋は最終巻でいくらかの謎が明らかになるも、まだまだ謎も伏線も敵も盛りだくさんのままで終了と
消化不良極まりない典型的な打ち切りエンドになってしまったのが実に残念。