英雄取締部隊 菊池九五(講談社ラノベ文庫)
人間と魔族による百年以上の長きにわたる戦乱に終止符が打たれ、平和が訪れた世界を舞台にした
悪事を働く英雄を取り締まる少年少女たちの、英雄VS英雄なバトルファンタジーストーリー。
戦いしか知らないがゆえに平和な世界に馴染めず、悪事を働く英雄とそれを取り締まる英雄取締部隊。
という構図が物語の主軸になっているわけですが、これは中々やるせないものがありますね…
理由が理由だけに歪んで犯罪者に堕ちた英雄を明確な悪として見ることは難しいですし
かといって、実際に被害が出て不利益を受ける人がいる以上、彼らを放置するわけにもいかない。
だからこそ、相手を一人の人間として見て対峙する主人公やヒロインの姿が輝いて見えるわけですが。
ラブコメ面は今のところメインヒロインのリゼリアが優勢気味?
主人公は定職に就けず、五十もの仕事をクビにされた史上最年少で英雄となった刻銘族の少年。
実は魔族の王を打ち滅ぼし、百年以上にも亘る大戦を終わらせた「四英雄」の一人。
ぼんやりしていることが多く、気質は自由奔放、物事を深く考えず、能天気で人懐っこく
堅苦しいことを嫌い、自分に無頓着で思ったことをすぐに口にする、一言で纏めればバカっぽい性格。
英雄らしく正義感は強いのだが、上記の性格からいらない騒動を巻き起こすこともしばしば。
バイタリティ豊富で名誉欲や金銭欲はほぼ皆無なため、一人でどうとでも生きていけるタイプでもある。
また、幼い頃から戦場で生きてきたため、学がなく世間に疎いところも。
ヒロインは英雄マニアな隊長、見た目ロリな総隊長、フランクすぎる王女、物静かな竜神族。
一番のお気に入りは英雄取締部隊を管理するライヴァース国の第三王女、アンジェリーナ・バルド・ライヴァース。
万人の目を引く美しさと、気品が滲み出る居振る舞いを兼ね備えた、存在感のある美少女。
その聡明さと才能は歴代の王族一と言われるほどで民衆からは「民に寄り添う慈愛の王女」として有名。
しかし、事あるごとに城下はおろか田舎にまで足を運んだりと、行動力がありすぎる気質な上
下々の者に対してもあまりにフランクなため、一部の人間からはトラブルメーカーとして認識されている。
また、幼馴染である主人公に隙あらばプロポーズをするなど、恋愛方面でも行動派(でも思考は乙女チック)
現時点(一巻)においての評価はC。
英雄や勇者といった存在を丁寧に掘り下げ、虚像から現実に引き摺り下ろすという手法が中々興味深い。
テーマがテーマだけに決着の爽快感には欠ける感はありますが、救いや希望はちゃんと描かれているので
後味の悪さはそれほどではないですし、全体的なストーリーは上手く纏まっている印象。
キャラに関しては、バカっぽさが目立つけど掴むべきものは掴んでいる主人公が頼もしいですね。
ヒロインたちもツン成分持ちが一人もいないのでストレスを溜めずに可愛らしさだけを堪能できますし。
本筋は英雄を救う英雄になる! と主人公たちが意気を上げる中、平和になった世界を転覆させようと
各地で英雄を堕とし、暗躍する謎の組織の存在が不気味なところですが、さて。