奴隷姫と過ごす日々   高野小鹿(講談社ラノベ文庫)



ベテランの召喚英雄が奴隷と共に過ごす王宮家庭教師生活物語。
大枠としては教官(家庭教師)もの。底辺ポジのヒロインに教育を施し、成長させていく話ですね。
女王になるための「姫争い」を勝ち抜くことが目的なので、当然ビシバシと鍛えないといけないのですが…
指導対象であるシアンが健気すぎて、ついつい甘やかしてしまう主人公の気持ちはよくわかるなぁ。
まあ、それでは話が進まないのでその辺りは最終的にはキチンとやっているわけですが。
成長物語としての色が濃いですが、熱いバトル描写もきちんと用意されているので緩急もバッチリかと。
ラブコメ面は今のところ進展なし。メインヒロインのシアンは恋より愛に傾いている感じですし。

主人公は英雄としての資質に目覚めて十余年、数多の異世界を救った経験を持つベテランの召喚英雄。
早くに天涯孤独の身となり、中学に入ってすぐに異世界にばかり召喚される生活を送ってきたがゆえに
対応力と戦闘力こそ高いものの、ドライ&リアリストな性格であり、物事に対する執着心が薄く、責任感がない。
また、他人と深いところで関わりあうのが苦手で、剥き出しの好意を向けられることにも慣れていなかったりする。
最終学歴が小卒であるため学はないが、決して馬鹿と言うわけではなく、頭の回転は早い。

ヒロインは薄幸の奴隷姫、生真面目な王龍姫、腹黒な天翼姫。
一番のお気に入りは現在の女王(一巻時点で死去)の娘でもある竜族の少女、紫苑の王龍姫ミヅチ。
肩口で切り揃えた薄い紫色の髪に、菫色の瞳。そして、竜人ならではの竜角と比翼が特徴的な美少女。
やや生真面目すぎるきらいはあるものの、弱冠十三歳にして聡明かつ理知的な性格をしており
物静かで凛とした雰囲気を身に纏い、肝も据わっている。更に、偏見を持たずに他者を認めることが出来る
度量の大きさがあり、情にも厚いなど、女王としての素質は候補者の中でも図抜けている。

現時点(一巻)においての評価はC。
とにかくヒロインたちの癖のあるキャラ立ちっぷりが秀逸な作品ですね。
健気で純粋だけど、とことん一途過ぎるがゆえの奴隷根性が並外れているメインヒロインのシアン。
天使だけどあけすけ過ぎるクラリッサ、若年なのに人間出来すぎなミヅチと皆インパクトが強い。
その一方で、世界を救いまくっているがゆえに経験値から来る安定感はあっても熱がなくドライな主人公が
シアンの可愛らしさに絆されて徐々に人間として成長していく姿にもほっこりできます。
難を言えば、設定の都合上あくまで頑張るのはシアンという形を崩せないため、やろうと思えば無双できるだけの
力を持っているはずの主人公の活躍できる場面がかなり制限されているという点でしょうか。
本筋は十人の姫の中から勝者が決まるまで「姫争い」が続いていく形で進んでいくと思われますが、さて。